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2023.08.03

編集長のご褒美女子旅 2023 vol.3 道北編㊤羊と紡ぐ品々に触れ、最北のブルワリーを訪ねる

小川郁子編集長
小川郁子編集長

 苫小牧生まれ、札幌育ち。ビール、ワイン、日本酒、お酒全般、控えめにいって好きです。食べ物の好き嫌いもほとんどありませんが、ウナギやハモ、アナゴなどニョロっとしたものは苦手です。1996年に北海道新聞入社後は、道内各地や東京で1次産業や政治、行政などを担当しました。2023年5月からTripEat北海道編集長。

羊を飼い、毛を刈って「羊服」をつくっている逸見さん

 頑張ったあなたに贈る「ご褒美女子旅」。仕事に家事にと奮闘した自分へのご褒美に、いつもよりちょっと豪華な旅に出かけませんか。道央、道東、道北、道南と北海道を4エリアに分け、各エリアごとに宿や温泉、グルメに地酒…。「ご褒美旅」を提案します。道北編では、羊にまつわる食や衣、日本最北のブルワリーとワイナリー、お酒に合うチーズなどを探して旅をします。

障がい者が育てたブドウで来秋ワイナリーを開く「とわ北斗」

ヴィンヤードを背に「とわ北斗」のワインを手にする谷さん

 道北の旅は、旭川市の西隣、鷹栖町からスタートです。来年秋、鷹栖町に新しいワイナリーが誕生します。障害福祉サービス事業所の「とわ北斗」が運営します。とわ北斗は2016年からブドウを植え始め、18年には醸造委託を開始、すでにワインをリリースしており、来秋には念願の自社ワイナリーで醸造を始める予定です。障がいのある人たちと職員らが、丁寧に育てたブドウを使った自作ワインの誕生を前に、期待を膨らませています。

天気が良ければ大雪山系の山々を望むことができるそうです

 とわ北斗は12年に社会福祉法人「鷹栖共生会」が開設。就労継続支援B型の多機能型事業所で、野菜栽培やレストランや配色サービス、家具の再生販売、ゴミ分別リサイクル事業を実施しており、ヴィンヤードの運営もそのひとつ。ブドウやトマトを栽培する農業科では、精神や知的の障がいのある利用者14人が従事しています。

 鷹栖町は稲作が中心で、特産品としてコメやトマトジュースの「オオカミの桃」が有名ですが、ほかに目立ったものがありません。そんな中、鷹栖町で生まれ育った鷹栖共生会理事長の島畑光信さんが「鷹栖ではいい山ブドウがとれるので、ブドウを育てておいしいワインをつくりたい」とヴィンヤードを提案、ワインづくりが始まりました。

 とはいえ、土壌は粘土質で雨が降るとぬかるみ、乾くと固まってスコップも入りません。ワインづくりの経験のある職員を採用し、16年から試行錯誤しながらブドウの栽培が始まりました。水はけの悪い土地のため、畑を掘り、管を入れて埋め戻し、暗きょの整備から着手。初年度は800本を定植しました。その後、苗を増やし、現在は14ヘクタールある農地のうち5ヘクタールで、シャルドネやピノグリ、ピノノワール、ピノムニエなど9種類、1万5千本のブドウを育てています。将来的には、7ヘクタール、2万本を目指すそうです。

ブドウが実を付け始めていました。今年のできは-
今年6月に植栽した葡萄の苗

 ワインの醸造はブドウを植え始めて3年目の18年から。岩見沢市の10Rワイナリーに委託醸造しました。最初はブドウの量も少なく、赤、白を混合して白ワインを醸造。21年までは、混合でつくりましたが、22年は初めて赤、白に分けて醸造しており、今年12月から来年1月にかけてリリースする予定です。

 ワインと福祉の連携によるワイナリーやヴィンヤードは、栃木県足利市の「ココファームワイナリー」や長野県塩尻市の「サンサンワイナリー」などがありますが、道内では仁木町の「せせらぎファーム」など数少ないのが現状です。とわ北斗ではワイナリーがない現在、冬の利用者の仕事は大豆の選別やみそづくり、農機具の手入れ程度です。とわ北斗施設長の谷敏彦さんは「ワインを自分たちでつくれるようになれば、びん詰めやラベル貼り、箱詰めなど、利用者が通年携わる仕事ができます」と話します。将来的にワインと料理を楽しむレストランや試飲・販売できるショップも併設したいといい、実現すれば調理や料理のサーブ、販売など利用者の仕事もさらに増やせます。

ブドウがつるを伸ばしています

 谷さんは長く、障がいのある人の入所施設やグループホームなど福祉の現場で働いており、ワインやブドウについては、ほとんど知らなかったといいます。「ビールや日本酒は飲んでいましたが、ワインと言われると、赤と白と、あ、ロゼっていうのもあるよね、という程度の知識」だったそう。それが、ブドウづくりを始めてから勉強を始め、道内各地のワインも飲むようになり、おいしさを知りました。

 現在、流通している2021年のワインは、赤ワイン用と白ワイン用のブドウを混合してつくった最後の年のワインで、混醸を意味するフランス語の「アッサンブラージュ」という名前です。谷さんは「味わいはドライで辛口。花の香りのするものや苦みのあるものなどそれぞれのブドウの個性が表れています。野生酵母を使っており、蜜のような味わいも感じられます」と説明します。

 職員は10Rワイナリーや道の「北海道ワインアカデミー」などでワインづくりを学んでいます。北大大学院農学研究院の寄付口座「北海道ワインのヌーヴェルヴァーグ研究室」の分析によると、とわ北斗の畑には、大雪山系の地質に多い蛇紋岩が含まれ、ブドウのミネラルを増やす作用があり、鷹栖は盆地特有の夏の暑さはあるものの、夜に気温が下がるため、フルーティーな酸のあるワインができるそうです。とわ北斗がブドウをつくり、ワインをリリースしたことで、町内ではブドウ栽培に挑戦したいという人も出てきているそうです。谷さんは「地域のワインづくりを目指す人たちも受け入れ、一緒にワインをつくっていきたい。将来、鷹栖が新たなワイン産地になっていけたらいいと思っています」と夢を語ります。

住所/鷹栖町14線17号
電話/0166・87・5630
見学/事前予約で可

生産量日本一・幌加内のソバを手打ちで味わえる「蕎麦ダイニング そばの里」

自家製そば粉で手打ちしたそば

 とわ北斗のヴィンヤードを出た後は、北を目指します。国道275号をレンタカーで北上、ソバの一大産地、幌加内町に入りました。そろそろお昼。ここに来たら当然、おそばをいただきましょう。道の駅「森と湖の里ほろかない」に併設された「せいわ温泉ルオント」内の「蕎麦ダイニング そばの里」に向かいます。

道の駅に併設された温浴施設内にある「蕎麦ダイニング そばの里」

 レストランのガラス張りになったスペースでは、職人さんがそばを打っていました。こね鉢の中のポロポロした生地が、きれいにまとまっていきます。台湾からと思われる観光客が取り囲み、じっと眺めていました。殻の付いたままの玄蕎麦を雪を利用した低温倉庫で熟成させたソバの実を使い、石臼できめ細かくひいた自家製粉のそば粉を使用しているそうです。

 ルオントの業務課長、相木敏告さんは「そばは手打ち、つゆもだしをとった手作り。天ぷらもカラっとしていて、自慢です。売店でお土産用の乾麺などは売っていますが、ここでしか食べられない味」と太鼓判を押します。そばつゆは2種類の厚削り節をブレンドしています。

中札内地鶏かしわのせいろ
鶏ささみのピリ辛豆乳のつけそば

 もり、かけは700円から、1番人気は天ざる(1800円)と温かい天そば(同)ですが、中札内地鶏かしわのせいろ(1200円)と鶏ささみのピリ辛豆乳のつけそば(同)をオーダーします。

 手打ちのそばは、多少ばらつきはありますが、長さがしっかり。のどごしが良く、ツルリとした食感です。鶏かしわには、大きめの柔らかい鶏肉がごろごろと入り、ゆずと三つ葉の香りがさわやかです。シメジや刻んだあげ、焼いたネギがいいアクセントです。豆乳のつけそばは、豆乳ベースのつけだれに水菜やシメジ、ささみが入っており、まろやかな豆乳の甘さをラー油がピリリと引き締めます。

「純白の丘」からの眺め。奥の畑では、早生が満開です
「白銀の丘」のソバ畑。手前で少し開花していますが、まだ早いようです

 国道沿いのソバ畑では、ところどころでソバの花が咲き始めていました。町内では、一面真っ白に見える「純白の丘」や「白絨毯の畑」などソバ畑が美しく見えるビュースポットをいくつか選定していますが、伺った7月下旬にはまだ一足、早かったようでした。また、9月中旬の刈り取り後には、紅色の茎だけが残り、陽に照らされるとさんご礁のように真っ赤に映える畑も見られます。開花も刈り取り後も、いずれもごく短い、限られた期間ですが、ソバの生産量、作付面積ともにダントツに日本一の幌加内ならではの景観です。

 今年も「幌加内町新そば祭り」が9月2、3の両日、町役場周辺で開催されます。町内はじめ、全国から多くのそば店が出店し、食べ比べを楽しむことができます。

住所/幌加内町政和第一
電話/0165・37・2070
営業時間/午前11時半~午後2時、午後5時~午後8時
定休日/水曜

羊と暮らし、羊とつくる「羊服」 天然素材にこだわる「粗清草堂」

「羊服」が並ぶギャラリー。「天然素材、草木染め、手づくり」がモットー

 国道をさらに北上し、美深町に入ります。道北編の旅のテーマのひとつ、「羊」にまつわるお店に立ち寄ります。羊たちと暮らしながら、羊毛を使った服「羊服」や雑貨を製作、販売している工房「粗清草堂(そせいそうどう)」です。逸見吏佳(へんみ りか)さんが、アシスタントとともに、天然素材の羊毛を加工して、ベストやコート、ケープ、ルームシューズなどを手作りしています。

羊毛でつくったルームシューズやトートバッグ。型崩れしにくいそうです
身近な植物で染めた羊毛のストール

 綿などの薄い布に羊毛をのせ、圧縮してフェルト化すると、布の繊維に羊毛が入り込み、軽くてしっかりした布になります。その布でできているのが「羊服」です。コートでも重さは500グラム程度ととても軽いのが特徴。水ははじくのに、汗は外に逃し、乾きやすいといいます。ふんわりとした質感ですが、ひっぱりにも強く、型崩れしにくいそうです。

 首の周りにゆったりと巻き付けられるショールが26530円、Sサイズのトートバッグが25080円、大人用のSサイズルームシューズが26400円と、決して安価ではありませんが、すべて手作り、天然素材で、年間100着ほどしかつくることができない1点ものです。

新鮮なうちに染めると鮮やかなピンク色になるシラカバの内皮
布は煮出して染め上げます

 逸見さんは飼育している羊の毛のほか、主に道内のほかの牧場からも羊毛を仕入れています。羊毛はまず、洗浄効果のあるサポニンが含まれるハーブ「ソープワート」で洗います。輸入羊毛は多くがオーストラリアやニュージーランドからで、ほとんど放牧なので汚れが少ないのに対し、国産は羊舎で飼育されることが多く、ふすまやコーンなどの飼料を食べていることから、毛に飼料が入り込み、ごみ取りにとても手間がかかります。

 色は、黒や茶色、まだら、グレーなど羊の毛の色をそのまま生かすほか、身の回りに自生する植物で草木染めにします。クルミの葉で茶色に、シラカバの葉で黄色に、ふんわりときれいなピンク色はシラカバの内側の樹皮を使っています。当初、シラカバの内皮で染めた時ベージュになったのですが、伐採したばかりのみずみずしい内皮を使ったところ、ピンク色になったそうです。酸化するとベージュになるので、その前にすぐに使うのがポイントだそう。逸見さんは「シラカバを切り倒すと外側の樹皮をかご編み作家が持って行き、内皮を私がもらい、真ん中の木材を家具職人がとります。余すところはありません」と言います。

親羊は囲いの中で放牧
人に慣れた子羊は家の周りを自由に歩き回っています

 羊は現在、11頭。9頭は囲いの中で放牧し、この春生まれた2頭は家の近くで放し飼いにされています。羊はテクセル種やテクセルとロマノフを掛け合わせたものなどで、毛の色は白やグレー、まだらなどいろいろです。春生まれの2頭は人が哺乳して育てたため、人なつっこく、「めぇー」と鳴きながら近寄ってきます。

馬小屋だった部分の梁がそのまま残っています
家の断熱材代わりに入れた羊毛。一部を見られるように残しました

 江別市の羊毛専門店で働いていた逸見さんは2004年、子育て環境を考え、自然が豊かなことや、「羊毛を扱っているのだから、羊と間近で接したい」と、羊牧場のあった美深町仁宇布に移住。観光客や愛好者を対象に、羊毛を使ったぬいぐるみやルームシューズづくり、糸つむぎなどのワークショップを開いていました。逸見さんが「羊服」を着てワークショップを開いていたところ、「販売してほしい」という要望があり、10年ほど前からオーダーを受けて販売を始めました。

 町内の元農家の空き家を改築し、ギャラリーを開設したのは2015年。馬小屋だったところをギャラリー兼アトリエに、農家の住居部分を住宅として使っています。馬小屋だった当時の立派な梁が残っています。外壁と内壁の間には断熱材代わりに羊毛を600頭分入れており、冬は暖かく、夏は涼しいといいます。

今年2月のニューヨークのファッションウイークでモデルが着用、ランウエーを歩いた「羊服」

 逸見さんは全国のギャラリーやカフェなどで作品の展示会を開いてきましたが、19年に東京の展示会に展示ブースを出展。作品に目をとめたバイヤーの紹介で東京のデパートでも展示会を開きました。それを機に、昨年4月にはカナダ・バンクーバーで開かれたファッションショーに始めて出品し、今年2月には世界5大ファッションウイークのひとつ、米国のニューヨークファッションウイークでモデルが逸見さんの作品8着を着て、ランウエーを歩きました。9月にはフランス・パリのファッションウイークへの出展も決まっています。

野菜やハーブを育てている家庭菜園
シイタケを育てているほだ木

 活躍の場を世界に広げる逸見さんですが、自然の素材と手づくりという点から離れることはありません。自然の中で羊と暮らし、羊の毛を刈り、つむいで糸にしたり、布にしたりしており、「素朴な暮らしを通じて自然に感謝しています」と話します。家の横では家庭菜園で野菜やハーブを育て、ほだ木でシイタケをとり、ハチミツも採蜜しています。「田舎はものを選ぶには選択肢が少ないけれど、ないなら作ればいい。ものを作るには材料があり、場所もあって、恵まれています」と穏やかな表情で語ります。

住所/美深町辺渓285-5
電話/01656・9・1936
営業時間/午前10時~午後4時
営業日/6月から10月までの日曜、月曜。冬季は予約のみ

「牛のいる原風景を守りたい」 地元の生乳でチーズを手作りする「きた牛舎」

ふるさと・美深にUターンし、チーズをつくっている島さん

 美深町内にワインに合うチーズを製造・販売している工房があり、訪ねてみました。「きた牛舎」です。「牛のいる美深の原風景を守りたい」と、50歳でふるさと・美深にUターンした島英明さんが、町内の生乳で手作りでチーズを作っています。

「きた牛舎」のトレードマークの牛を描いた車

 「きた牛舎」の看板商品は「牧場(まきば)のラクレット」。3~5ミリの厚さにスライスしてフライパンに並べ、ごく弱火で1~2分熱するとチーズが溶け出します。これを蒸したジャガイモやバゲットにかけて食べます。黒こしょうを振ってもおいしいそうです。溶けたチーズの塩味がジャガイモの素朴な味を引き立てます。カチョカヴァロはスライスして両面を焼くと、外はカリカリ、中はもっちりのチーズステーキになります。熱で伸びるので、パスタやカレーなどに入れてもいいそうです。

 ミルクの風味と軽い酸味があり、ハチミツやフルーツソースをかけると、デザートのように味わえる「フロマージュブラン」や白カビの香りとちょっと強めの塩味があり、トロトロ食感の「しろかんば」、さけるチーズの「フエルサンゴ」などもあります。

 島さんのお父さんは、馬や牛を売買する「博労」だったそうです。お兄さんと島さんが手伝いながらお母さんが乳牛を飼育。島さんは「子どものころ、牛の世話の手伝いがいやでしょうがなかった」と言います。牛の匂いが体につくし、重労働で、「こんな仕事はいやだ」と思い、早く都会に出て、就職しようと思っていたそう。酪農はお兄さんが継いだものの、島さんは年齢を重ね、父母が亡くなってから、「ふるさとはどうなるんだろう」と思うようになったと言います。お兄さんの牧場も後継者がおらず、「兄が酪農をやっているうちに、ふるさとを少しでも活性化したい。少しでも賑やかになれば、血はつながっていなくても、若い世代が来てくれるかもしれない」と考え、美深に戻りました。新得のチーズ工房「共働学舎新得農場」でチーズづくりを学び、2009年に会社を設立、翌年からチーズの製造を始めました。お兄さんは酪農をやめてしまったそうですが、チーズ工房には、若い後継者が現れたそうで、島さんはうれしそうです。

住所/美深町川西50-7
電話/01656・8・7633
営業時間・営業日/不定。チーズは「道の駅びふか」などで購入可

日本最北のクラフトビール&地元素材のフードが楽しめる「美深白樺ブルワリー」

美深白樺ブルワリーとレストランBSBが入る元農業倉庫

 美深町内には、日本最北のクラフトビール醸造所「美深白樺ブルワリー」があります。そのビールを飲めるレストラン「BSB」に行ってみましょう。町中心部の近い築100年近いレンガ造りの元農業倉庫に、クラフトビールの醸造所とレストランが併設されています。

クラフトビールの4種類のテイスティングセット

 ビールはすべての種類に、美深の特産品の白樺樹液を使用。最初は全量を白樺樹液でつくってみたそうですが、味やコスト面で見合わず、調整の結果、今は数%、調味料のようにして使っています。

 醸造所には醸造用のタンクが7種類あり、これをフル稼働させてビールをつくっています。この日、レストランで提供していたのはタップの生ビール(420ミリリットルのパイントが1190円、250ミリリットルのハーフパイントが710円)が6種類、「サマー(IPA)」や「フェンネル(IPA)」などの季節商品のボトルビール(330ミリリットル、)など。テイスティングセットとして、3種類(各110ミリリットル、1050円)と4種類(同、1390円)もあります。

 4種類のテイスティングセットをオーダーし、美深白樺ブルワリーの代表作というIPA「WHITE LINE」と大地やハーブを思わせる香りと苦みが特徴のIPA「フェンネル」、トロピカルと苦めのシトラスを思わせるIPA「Summer」、美深の草原をイメージしたパイナップルのような香りのすっきりとした「Wild sheep chase」を選びました。「この苦みをじっくり味わいたい」と思うものや、「煮込みに合いそう」とひらめくものなど、それぞれ味わいや香りが違い、こっちを一口、あっちをグビグビと楽しめます。

クラフトビールにぴったりのフード

 フードは「あさりのクラフトビール蒸し」(700円)と「ビール屋さんの特製からあげ」(580円)、「ソーセージ盛り合わせ」(1100円)、生地にそば粉を使った「そばピザ」(千円)をオーダーしました。からあげは子どもの握りこぶしほどもある大ぶりで、ビールに合う、少し濃いめの味付け。ソーセージは名寄産SPF豚のソーセージなど3本で、スパイスがきいています。そばピザのソバは、ブルワリー創設に携わった柳生佳樹さんが営む「松山農場」で生産されたもの。

 メニューにはほかにも、松山農場で生産された羊肉を使ったラムカレーやジャガイモを使ったコロッケやフライドポテトもあります。一番人気は松山農場のラム肉を使ったジンギスカン(1人前150グラム、野菜付き、1800円)で、羊の内臓(900円)や羊肉(1350円)の追加もできます。

奥にはクラフトビールを醸造する大きなタンクが並んでいます

 ブルワリーは2018年に創設。19年7月に初めて仕込みをし、9月から出荷しています。社長の高橋克尚さんは祖父の代からの江戸っ子といい、大手IT大手を退職して、18年8月に東京から移住。高橋さんは6年前、道内をバイクでツーリング中に美深を訪れ、柳生さんが営むペンション「ファームイントント」に2泊し、柳生さんから、人口が減る美深の現状や白樺樹液をつかった地域活性化などの話を聞いたといいます。クラフトビール事業についても知り、柳生さんの情熱を感じ取ったそうです。

 かねて、「町内外の人が集まり、町を活気づける拠点づくりに関わりたい」と、地方活性化への夢を抱いていた高橋さん。美深でクラフトビールづくりが事業化していることを知り、「行こうかどうしようか迷ったが、悩んでも結論が出ないから、行ってから悩もう」と美深にやってきました。ビールづくりは初心者だったという高橋さんはビールの醸造設備の会社から紹介を受けるなどして、約1年かけて醸造のノウハウを学んだそうです。

シラカバ材の椅子やテーブルが並ぶ落ち着いた雰囲気の店内

 美深白樺ブルワリーはBSBでビールを提供するほか、イベントなどにも出店。音楽フェスやビールのイベントなどでは数日で200~300リットルが出ることも珍しくなく、今は「タンクが空いたらすぐつくる」という状態だといいます。ビールは1カ月でできるので、常時フレッシュなものを提供できています。

 美深町の人口は、減少を続けています。高橋さんは「この状況では莫大な売り上げは期待できないが、目先の利益ではなく継続することが大切。まだ途上だけど、日本一おいしいビールがあると地元の人が誇りに思うものをつくっていきたい」と話します。

 高橋さんは、相手先ブランドによる製造(OEM)も手がけ始めています。これまで雄武町や沼田町、礼文島、稚内市などと提携、各地をイメージしたビールの委託醸造をしました。高橋さんは、それぞれの地域の特性や社会的な背景を反映させたビールをつくりたいといい、「道北すべての市町村のビールをつくりたい」と夢を膨らませています。

住所/美深町大通北4-9
電話/01656・8・7101
営業時間/平日は正午~午後3時、午後5時~午後10時。土曜日曜は通し
定休日/なし
編集長のご褒美女子旅 2023 vol.3 道北編㊦最北のワイナリーを訪れ、地元産絶品羊肉とビールを楽しむ
編集長のご褒美女子旅 2023 vol.2道央 余市・仁木編㊤道産ワイン産地で美酒を楽しむ
編集長のご褒美女子旅 2023 vol.1 札幌編①道産ワインをホテルでゆったりと

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小川郁子編集長
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 苫小牧生まれ、札幌育ち。ビール、ワイン、日本酒、お酒全般、控えめにいって好きです。食べ物の好き嫌いもほとんどありませんが、ウナギやハモ、アナゴなどニョロっとしたものは苦手です。1996年に北海道新聞入社後は、道内各地や東京で1次産業や政治、行政などを担当しました。2023年5月からTripEat北海道編集長。

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