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2024.01.04

〈北海道クラフトビール探訪〉①ストリートライト・ブルーイング(札幌市) まちを照らす街灯のように、地域のにぎわいつくりたい

小川郁子編集長
小川郁子編集長

 苫小牧生まれ、札幌育ち。ビール、ワイン、日本酒、お酒全般、控えめにいって好きです。食べ物の好き嫌いもほとんどありませんが、ウナギやハモ、アナゴなどニョロっとしたものは苦手です。1996年に北海道新聞入社後は、道内各地や東京で1次産業や政治、行政などを担当しました。2023年5月からTripEat北海道編集長。

「ストリートライト・ブルーイング」の、宮口さん(右から2人目)と川村さん(右)、大阪さん(左から2人目)、醸造スタッフの2人
宮口さん(右から2人目)と川村さん(右)、大阪さん(左から2人目)、醸造スタッフの2人

 ビールを飲んだ人の心が明るくなり、その明るさがまちに広がりますように-。そんな願いを込めて2022年2月、札幌・桑園地区の市中央卸売市場近くで醸造を始めたのが、「ストリートライト・ブルーイング」です。市内で最大規模の醸造施設にはビアパブを併設。「ストリートライト(街灯)」の名の通り、代表社員の3人は、ビアパブが地域を照らし、地域のにぎわい創出の場になるように願っています。

姉妹都市の米・ポートランドをお手本に

左から、にごりのある「愛とへいわ」、柔らかい酸味のある「PRECIOUS ALE」、コーヒーローストの香りの「BBB」
左から、にごりのある「愛とへいわ」、柔らかい酸味のある「PRECIOUS ALE」、コーヒーローストの香りの「BBB」

 3人は、「ビール王子」の名でインフルエンサーとしても活動する元札幌市職員の宮口晃一さんと、特定の醸造所を持たない「ファントム・ブルワー」として全国各地のブルワリーで醸造に携わってきた醸造家の川村洋平さん、札幌でビールの普及活動に取り組んできたフリーランスのコピーライター大阪匡史さん。

醸造所に併設されているビアパブの店内
醸造所に併設されているビアパブの店内

 3人の共通点は、札幌市の姉妹都市の米・ポートランドにあるといいます。人口65万人のポートランドには、70ものブルワリーがあり、「ビールのまち」として知られています。夕方や週末には、ブルワリーに併設されているタップルームに友人同士や家族連れが訪れ、地域の社交場のようになっており、「札幌にも各地にそんな場所がほしい」と実感したそうです。

常時10種類ほどのクラフトビールをつないでいるというタップからビールを注ぐ様子
常時10種類ほどのクラフトビールをつないでいます。時にはゲストビールも

 宮口さんは市職員だった時、胆振東部地震の被災地支援プロジェクトとして実施した厚真町産のハスカップを使ったビール造りに携わり、「特産品をビールにすることで、飲んだ人が楽しくなって、地域に目を向けるきっかけになる」と、ビールを軸に地域や人をつなぐことはできないかと考えるようになりました。ポートランド州立大でまちづくりの人材育成プログラムに参加したこともあり、ポートランドのような「ビールを軸にしたまちづくり」に取り組むことを決意したといいます。

 フリーランスのコピーライターだった大阪さんも、ポートランド州立大のまちづくり人材育成プログラムに参加。その経験から、2019年の札幌市とポートランドの姉妹提携60周年の記念ビールをつくる事業を企画し、ポートランドのようにビールを軸にしたまちづくりを目指すようになりました。

 その姉妹提携60数年のビールを醸造したのが川村さん。川村さんと大阪さんがブルワリー開設に向け準備を進めるなかで、宮口さんも合流し、3人で21年、ストリートライト・ブルーイングを運営する合同会社「札幌醸々(じょうじょう)」を設立しました。

70種類以上を醸造 道産材料にも挑戦目指す

それぞれのビールで異なり、どれもポップで楽しい印象の缶のデザイン
缶のデザインはそれぞれのビールで異なり、どれもポップで楽しい印象です

 「規模の大きなブルワリーをつくりたい」という宮口さんらの希望もあり、物件探しは難航しましたが、桑園の元倉庫が見つかりました。仕込みのタンクは1200リットル、発酵タンクは600、1200、2400リットル、貯蔵タンクは1200、2400リットルと、道内の多くのクラフトビール醸造所と比べて大きなものが並びます。最初に醸造したのはIPAとペールエール。アーティストがデザインした缶ラベルのシリーズや川村さんがストリートライト設立以前のファントム時代からつくっている「HoboBrewing(ホーボーブルーイング)」ブランドなど、さまざまなビールをつくり、操業開始から9カ月ほどで、市内の飲食店専用のビールや醸造所近くの札幌競馬場のオリジナルビールなど、OEM(相手先ブランドによる生産)を含め、70種類以上を醸造しました。

ビアパブの店内の窓から見える銀色に輝く大きなタンク
ビアパブからは銀色に輝く大きなタンクが見えます

 ただ、まだフラッグシップは定まっておらず、「これから何種類かつくるつもりです」(宮口さん)。また、原料は現在、輸入が中心ですが、今秋には上富良野町に行って、ホップ農家の収穫を手伝い、生ホップを仕入れて「HOPPIN’ JACK FRESH」を醸造。「できれば麦も道産を使いたい」と言います。

「地域ごとにクラフトビールを」 愛好者のすそ野広がりに期待

ストリートライト・ブルーイングのビアパブ入り口
ストリートライト・ブルーイングのビアパブ入り口

 近年、道内はじめ全国でクラフトビールのブルワリーが急増しています。宮口さんは「ブルワリーが増えるのは大歓迎。自分の住む地域にブルワリーがあれば、クラフトビールを飲む人が増え、愛好者のすそ野が広がる」と話します。宮口さんは「例えば、北24条や琴似などバスターミナルがあるような地下鉄の拠点駅ごとに、ブルワリーができて、バス待ちの間にビアスタンドでビールを楽しんだり、地域の人と交流したりできるようになればいい」と提言します。縁あって桑園に居をすえたストリートライトも、桑園地区の人たちが集い、桑園のまちを照らす「街灯」になり、「ここから何かが生まれれば」と願いを託しています。

                          ◇

 ストリートライト・ブルーイングは、札幌市中央区北10条西19丁目1-1。缶ビールは併設するビアパブのほか、ホームページでも購入できます。

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 北海道では近年、クラフトビールのブルワリーが急増し、各地で毎年、新しいクラフトビールが誕生しています。単なるブームではなく、ワインでいえば「テロワール(風土)」を生かしたその土地ならではのビールが地域の人々に迎え入れられています。各地のクラフトビールの醸造所を訪ね、つくり手の情熱や思い、ビールのおいしさを伝えます。

〈北海道クラフトビール探訪〉②当別セブンズ・ブルーイング ワインのような食中酒 すべて手作業で
小川郁子編集長
小川郁子編集長

 苫小牧生まれ、札幌育ち。ビール、ワイン、日本酒、お酒全般、控えめにいって好きです。食べ物の好き嫌いもほとんどありませんが、ウナギやハモ、アナゴなどニョロっとしたものは苦手です。1996年に北海道新聞入社後は、道内各地や東京で1次産業や政治、行政などを担当しました。2023年5月からTripEat北海道編集長。

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