国産原料へのこだわりを貫く
小樽市にある北海道ワインは、1974年の創業以来、一貫して国産原料にこだわったワイン造りをしている。
25年ほど前、日本中でワインブームが起こった。大手メーカーが輸入ワインを混ぜて出荷を増やしても、供給が追いつかない状態が続き、出した分だけ売れる。そんな状況にも関わらず、創業者の故・嶌村彰禧社長(当時)は「社の理念が崩れる」と、自社のブドウ畑と道内契約農家の生産するブドウだけでワインを造り続けた。
生産農家への思い
山梨県のブドウ栽培農家に生まれ育ち、父親から土作りから剪定まで仕込まれた。輸入ワインや輸入濃縮果汁を使えば一緒にやってきた農家はどうなるのか? そんな思いが決断の背景にあった。
数年後、ワインブームが去ると、大手他社は一気に手を引いていった。取引先を失って大量にブドウを抱えて苦境に立つ余市や仁木の農家から、その多くを買い取ったのは、業界では有名な話だ。
生産者の名前入りワインをいち早く販売
契約農家の単独仕込みで造ったワインを「葡萄作りの匠・匠ヴィンヤードシリーズ」と題して、生産者の名前入りで販売するのも、良いブドウを入れてくれる農家を大切にする気持ちの表れでもある。
日本で製造されるワインのうち、国産ブドウのみを原料とした「日本ワイン」の割合は、2割ほど。北海道ワインは、その最も大きいメーカーになっている。
持続可能な生産体制を目指して
浦臼町の鶴沼農場など道内外にある直轄・関連農場3カ所のほか、余市、仁木町を中心に道内約200戸の栽培農家と契約。原料の9割以上を道産が占める。
ブドウ生産者の高齢化や後継者不足が深刻化する中、「スーパーなどで手軽に手にとってもらえるワインを造り続けるため」(同社)に、スマート農業の実証実験などにも取り組んでいる。
〈編集長のワイナリー巡り〉⑦ドメーヌレゾン(中富良野町) 人間と自然が共存できる環境でのワイン造りを
伝統の中に新しいチャレンジを
創業期から、まだ国内では珍しかった、瓶詰め時に殺菌のための加熱をしない「生詰め」にこだわる。伝統を重んじる一方で、商品化までに手間と時間がかかる瓶内二次発酵スパークリングや、赤、白、ロゼに次ぐ「第4のワイン」として人気が出ている、白ブドウなどを赤ワインを仕込むのと同じように皮も一緒に発酵させる「オレンジワイン」の醸造など、新しい取り組みにも挑戦する。
北海道ワイン北海道営業部営業企画課の今村直明担当課長は「ワイン産地として北海道が非常に面白くなってきていて、色々な試みも始まっている。気軽に飲んでもらえる商品を造っているので、ファンになって推してもらえるようになるのが希望です」と話す。
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<北海道ワイン> 小樽市朝里川温泉1の130。直売所では、ワインの試飲(有料、無料)がある他、ワインの試飲とおつまみが付いた工場見学プレミアムツアー(約 90分、1500円、要予約)も開催している。HPは https://www.hokkaidowine.com/
北海道にあるワイナリーは53を数え、今やワインの一大産地となっています。地形や気候、積雪量の違いなど、生産者たちは地域ごとのテロワール(風土)を生かし、時には自然と戦いながらブドウの樹を育て、ワイン造りをしています。
人とブドウの生命力が勝ち取った「命の恵み」でもあるワイン-。そんなワインを生み出す北海道のワイナリーを編集長の山﨑が巡ります。
(※記事中の情報は記事公開当時のものです)