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2022.05.24

〈山﨑編集長のワイナリー巡り〉①最北のワイナリー森臥(名寄市)かがり火を焚きながらブドウを守る

山﨑真理子
山﨑真理子

 北大水産学部時代に1年間、練習船に乗って遠洋航海に出ていた船乗り。北海道新聞社に入社後は、社会部の警察担当を振り出しに、網走、帯広、釧路など道内各地で勤務。東京勤務時代は政権交代時の民主党の番記者として、鳩山政権誕生を取材した。2022年4月にTripEat北海道を立ち上げ、初代編集長に就任、23年5月から千歳支局長。

霜が降りないよう、かがり火を焚くビンヤード
霜が降りないよう、かがり火を焚いてブドウの樹を守る

 日本最北のワイナリーとして知られる名寄市の「森臥(しんが)」。竹部裕二さん(49)は「富良野でもできるなら、名寄でもできると思った。大した気候も変わらないとの感覚だった」と振り返るが、もちろんそれは、大きな間違いだった。

誠実な人柄がにじみ出る「森臥」の竹部裕二さんと「森臥」の店内
誠実な人柄がにじみ出る「森臥」の竹部裕二さん

寒さで1度は断念

 埼玉県生まれで北大出身の元エンジニアの竹部さんは2006年、名寄出身で実家が農家の妻麻理さん(54)とワイン用ブドウの栽培を始めた。
 富良野でも栽培されている欧州系品種で始めたが、知識も技術も足りていなかった。翌年、氷点下30度にもなる寒さが原因でブドウの樹が病気にかかり、「全て引き抜くしかなかった」。その後2年以上、夫婦間でワインの話に触れることはなかった。けれど、心の底に「もう1回やらないとならない」との思いが火種としてくすぶり続けた。
 雪の布団で「暖」を取りながら春を待つブドウの樹にとって、最大の難関は、その布団から出入りする時季だ。やっとの思いで芽吹いた春先や、ようやく実を付け、あとは収穫を待つばかりとなった時に、突如として大敵の霜が襲ってくる。中でも春先の遅霜は致命傷となる。

山ブドウの交配種「小公子」
山ブドウの交配種「小公子」

かがり火を焚き、再挑戦

 畑の場所も変えて心機一転、2011年の再挑戦では、共に寒さに強いバッカスと、道内での実績がなかった山ブドウを交配した「小公子」を選んだ。春の霜対策として、冷え込みそうな日は、固形燃料を入れた専用缶を畑に並べ、寝ずの番をしながらかがり火を焚く。6月の霜も珍しくなく「年に2回、火を付けることもある」。秋は霜が降りる前に早めに収穫日を決めておく。

専用の缶に入れた約300個の固形燃料の灯で染まるビンヤード
専用の缶に入れた約300個の固形燃料を助っ人の手を借りて1時間かけて点灯する

地元の人たちに

 まだ収穫に至らない畑を除いた2ヘクタールから約4000本を造る。直売店での販売を基本とするのは「せっかく名寄で造っているのだから、ここで販売して、地元の人たちに飲んでもらいたい」との思いからだ。

森臥の直売所の外観
4月上旬に訪れた時も、直売所横のブドウ畑には、まだ雪が積もっていた

 この春、リリースしたワインは「地域性をよく表現してくれている。穏やかな奇麗な酸がしっかり残って、食中酒に向いている。質的にもおいしいワインができた」と自負している。

最北に位置するブドウ畑の風景
最北に位置するブドウ畑。遅霜と戦いながら、実をつける

ブドウの頑張りをワインボトルに詰める

 竹部さんに目指すべきワイン像を尋ねると、「全く無いんです。そもそもワイン造りを始めるまで、人生で3本もワインを飲んでいないので」と笑った。そして、強いて言うならば―と前置きした上で、こう言葉を紡いだ。

 「こんな寒い所に連れて来られたブドウの頑張りが、ボトルの中にぎゅっと詰まっていればいいかな」

◇    ◇    ◇

 北海道にあるワイナリーは53を数え、今やワインの一大産地となっています。地形や気候、積雪量の違いなど、生産者たちは地域ごとのテロワール(風土)を生かし、時には自然と戦いながらブドウの樹を育て、ワイン造りをしています。

 人とブドウの生命力が勝ち取った「命の恵み」でもあるワイン-。

 そんなワインを生み出す北海道のワイナリーを編集長の山﨑が巡ります。

<森臥>名寄市弥生674。直売所での販売は、HP(https://shinga-shinga.jimdofree.com/)の問い合わせフォームで個別対応している。

山﨑真理子
山﨑真理子

 北大水産学部時代に1年間、練習船に乗って遠洋航海に出ていた船乗り。北海道新聞社に入社後は、社会部の警察担当を振り出しに、網走、帯広、釧路など道内各地で勤務。東京勤務時代は政権交代時の民主党の番記者として、鳩山政権誕生を取材した。2022年4月にTripEat北海道を立ち上げ、初代編集長に就任、23年5月から千歳支局長。

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