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2023.07.28

編集長のご褒美女子旅 2023 vol.2道央 余市・仁木編㊦ウイスキー&フードとお土産ワイン探しを楽しむ

小川郁子編集長
小川郁子編集長

 苫小牧生まれ、札幌育ち。ビール、ワイン、日本酒、お酒全般、控えめにいって好きです。食べ物の好き嫌いもほとんどありませんが、ウナギやハモ、アナゴなどニョロっとしたものは苦手です。1996年に北海道新聞入社後は、道内各地や東京で1次産業や政治、行政などを担当しました。2023年5月からTripEat北海道編集長。

ニッカウヰスキー余市蒸溜所に併設されているレストラン「RITA’s KITCHIN(リタズ・キッチン)」の料理とウイスキー

 道産ワインの一大産地、余市、仁木を巡る道央編の後半は、お土産用ワインを探して酒屋さんを巡ります。せっかく余市に来たので、リニューアルしたニッカウヰスキー余市蒸溜所のレストランにも立ち寄り、ここでしか飲めないウイスキーとフードも楽しみます。ワインに合うジビエのお土産も見つけました。

有名ワイナリーが造った店専用のワインを置く「ヨイッチーニ」

国道沿いで明るい光を放つ「ヨイッチーニ」

 実は前日の夜、おなかはいっぱいでしたが、すごいお店があると聞き、夕食後にちょっと外に出てみることにしました。夜の国道5号沿いで、明るい光に浮かび上がるイタリアン「ヨイッチーニ」です。カジュアルな雰囲気の中、手ごろな値段で地産地消にこだわった食事やワインが味わえます。余市産の希少なワインをグラスで飲むことができ、さらにこの店のオーナーシェフ相馬慎悟さんが育てたブドウでつくった「ソーマニヨンブラン」もあります。

店主の相馬さんのブドウでつくられている余市産のワイン

 ここでは、余市産のワインをグラスで900円から提供しています。豊富な品揃えの秘密は、相馬さんがヴィンヤード「ソウマファーム」を運営していること。ソウマファームのブドウは「ドメーヌ・タカヒコ」「ドメーヌ・モン」「ランセッカ」「山田堂」「ミソノヴィンヤード」などで使われています。

有名ワイナリーが相馬さんのブドウで醸造した「ソーマニヨン」

 さらにすごいのは、有名ワイナリーが醸造したヨイッチーニ専用のワインがあることです。ソウマファームのソーヴィニヨンブランを100%使い、「ドメーヌ・モン」「ドメーヌ・タカヒコ」」「ランセッカ」が醸造した「ソーマニヨン」の取り扱いは、ヨイッチーニのみ。ここでしか飲めません。

 見た目からして、同じブドウで作ったとは思えない違いがあります。ドメーヌ・モンは一番色が薄く、フルーティーな香りが立ち上ります。さわやかな酸味とブドウの甘みを感じます。ドメーヌ・タカヒコは、ややオレンジがかった色合いです。ドメーヌ・タカヒコのワインはなかなか手に入りませんが、特に白は非常に希少。ブドウの味をしっかりと感じますが、まろやかで複雑な味わいです。ランセッカは一番色が濃く、オレンジワインと間違えそう。やや濁っており、どっしりとした腰のある飲み口です。

 このシリーズは、相馬さんがドメーヌ・タカヒコの曽我貴彦さんと「同じブドウで、違う醸造家がワインを造ったらどうなるか」と話したことがきっかけで、2020年に初めて3ワイナリーが醸造。その構想の相談をするなかで、「ドメーヌ・モン」の山中敦生さんが「相馬さんのソーヴィニヨンブランだから、ソーマニヨンだ」と命名したそうです。同じ畑の同じ年のブドウが、作り手によって、これだけ味や香り、色も変わるのかと不思議です。そこがワインのおもしろいところなのでしょうね。

パテ・ド・カンパーニュと鹿肉のロースト。ソースもワインブドウでつくっています

 せっかくなので、フードも頼んでみます。「相馬のおまかせ前菜盛り」です。余市の北島農場が生産するブランド豚「北島豚」を使ったパテ・ド・カンパーニュと鹿肉のローストが盛り合わせてあります。北島豚は抗生物質を使わず、くみ上げた地下水を与え、温度管理を厳格にして育てられた豚です。パテはしっとりしているのに脂がくどくなく、刻んだ鶏の砂肝が、食感のアクセントになっています。強めの塩気でワインが進みます。鹿肉のローストはしっかりと火が通っているのにしっとり。ピノノワールとツヴァイゲルトレーベを煮詰めて作った甘酸っぱいソースが添えられています。

小上がりもある店内
カウンターからは調理の様子も見ることができます

 相馬さんは札幌市内のイタリアンで料理を学び、ワインづくりに携わりたいと、2014年に余市に移住。農業生産法人で働き、その後その法人を引き継いだそうです。その際、その法人が運営していたヨイッチーニとジェラート店「フルティコ」もそのまま引き継ぎ、ヨイッチーニでは自ら腕を振るっています。

住所/余市町大川町8-32
電話/0135・48・7700
営業時間/午後6時~午後10時(午後8時以降の来店は要予約)
定休日/月曜、火曜、第3木曜
北海道の一大ワイン産地・余市町で地元ワインが飲める美味しいお店4選

リタの料理レシピを再現 ウイスキーとともに味わえる「RITA’s KITCHEN」

リタのレシピを再現したメニューもそろえた「RITA’s KITCHEN」

 余市のお酒といえば、ワインと並んでウイスキーでしょう。駅からほど近いニッカウヰスキー余市蒸溜所に向かいます。併設されているレストラン「RITA’s KITCHEN(リタズ・キッチン)」は今年4月28日にリニューアルオープンしたばかりです。大改修し、メニューも一新。ニッカウヰスキー創業者竹鶴政孝の妻、リタのレシピを再現した料理などを味わうことができるようになりました。

余市蒸溜所限定のシングルモルト3種の飲み比べセット

 せっかく工場に来たので、ウイスキーも味わってみます。余市蒸溜所と宮城蒸溜所の限定シングルモルト各3種の中から、3種類を20ミリリットルずつ飲み比べできる「キーモルトテイスティングセット」(1800円)がありました。もちろん、余市蒸溜所限定の「シングルモルト余市」の3種を選びます。

 1番色の薄い「ピーティ&ソルティ」はピートの香りが強く、薫製と潮の香りがします。最も色の濃い「シェリー&スイート」はシェリー樽熟成で、カカオのような香りとほろ苦さ、ほんのり甘さを感じます。「ウッディ&バニラ」は新樽で熟成させており、フルーティーなさわやかな香りがします。新樽にはバニラの香りがするバニリンという成分が含まれており、樽からその香りがウイスキーに移り、色と味に出てくるとのこと。この3種の原酒は同じですが、どんな樽で熟成させるかやどんな酵母で熟成させるか、ピートの香りをどれだけ付けるかなどで味や香りが変わってくるそうです。

リタのレシピを再現したオリジナルローストチキン

 リタのレシピを再現した中から、メニューでもトップを飾るおすすめのオリジナルローストチキンを頼んでみます。リタは丸鶏を買ってきて、作っていたそうです。1羽まるごと(2800円)もありますが、ここは慎ましく1/4CUTプレート(960円)で。運ばれてくると、それでもボリューム満点。大ぶりのチキンのかたまりがごろごろと盛られています。

 焼き上げられた骨付きのチキンは、皮はパリパリ、中はジューシー。骨付きですが、ナイフとフォークで簡単に身を外すことができます。ハーブの香り豊かなチキンはそのままでも十分、おいしく食べられますが、付け合わせに付いているカットトマトやタマネギスライス、炒めタマネギをソース代わりに一緒に食べると、また味わいが深まります。特にじっくりあめ色に炒められたタマネギは、チキンにぴったりです。

 ローストチキンにリタのオリジナルレシピを再現した「グリーンピースとパルメザンチーズのポタージュ」とパン(480円)を付ければ、ランチセットにもなります。リタオリジナルレシピはほかに、チキンブイヨンを使った野菜のスープ「スコッチブロス」(650円)やリタの故郷スコットランドの郷土料理「シェパーズパイ」(830円)などもあります。

ウイスキーにぴったりな「ポットスチルスモークディッシュ」。ポットの中にはスモークも一緒に閉じ込められています

 ウイスキーに合うおつまみをもう1品。「ポットスチルスモークディッシュ」(1300円)です。キッパー(ニシン)、ラム肉、酒盗クリームチーズ、ミックスナッツ、甘エビ、ゆで卵の薫製が、ウイスキーを蒸留するポットスチルを模した鍋で提供されます。ふたを開けると、閉じ込められていたスモークがふわーっと広がります。ウイスキーを醸造した樽のチップで薫製にしているそうです。ウイスキーのスモーキーさと薫製の香りがばっちり合います。

リタのオリジナルレシピのデザート「ゴールデンプディング」

 リタのオリジナルレシピはデザートにもありました。「ゴールデンプディング」(360円)です。熱々で提供されたプディングはしっとり、じゅわっとした食感で、バターの香りが芳醇。添えられたマーマレードでさわやかに食べられます。デザートはほかに、竹鶴ピュアモルトをかけて食べるソフトクリーム(630円)なども人気だそうです。

売店の前にはポットスチルが展示されています
余市蒸溜所限定のシングルモルトもたくさんあります

 横にある売店にも足を運んでみます。外にはポットスチルが展示されています。先ほどの余市蒸溜所限定の3種のシングルモルトのほか、ニッカの定番の「シングルモルト余市」や「竹鶴ピュアモルト」なども購入できます。

住所/余市町黒川町7-133
電話/0135・23・4611
営業時間/午前10時~午後3時50分
定休日/年末年始

地元のワインがずらり 余市産ブドウの実力を伝える「中根商店」

余市産ワインや余市産ブドウを使ったワインを数多くそろえる中根商店

 余市や仁木のワイナリーのワインをお土産に-と、中根商店にやってきました。お店に置いている商品の9割がワインといい、店主の中根賢志さんはワインアドバイザーの資格を持ち、余市、仁木のワインを含めた道産ワインを多く扱っています。

ずらりと並んだ道産ワインについて説明する中根さん

 中根商店は1927年(昭和2年)創業、中根さんは3代目です。焼酎や日本酒、ビールなどを扱う「まちの酒屋さん」でしたが、中根さんは1990年代から、好きだったワインの勉強を本格化させました。そんな中、16、17年前に問屋主催の展示会で飲んだ道産ケルナーのおいしさに驚きました。岩見沢市の宝水ワイナリーでした。あまりのおいしさに、宝水ワイナリーに電話をしてどこのブドウが訪ねると、余市産と知ったそうです。

道産のオレンジワインも並びます

 その後、余市産のブドウの力に魅せられた中根さんは町内のブドウ農家を訪ね歩き、どこのワイナリーに出荷しているのかを調べ始めました。余市のブドウは同内外に広く出荷されていました。そこで、中根さんは余市産のブドウを使ったワインを扱い始めました。中根さんは「ブルゴーニュとも、ボルドーとも違う。こんな味もあるんだと驚きました」と言います。いまや、本州や海外からも余市産ワインの写真をスマホで示し、「これがほしい」「このワインのブドウ畑が見たい」とやってくるそうです。中根さんは「余市の農家の努力は間違いない。天候や土壌もあるが、農家はプライドを持って、競い合っていいものを作ってきた。その努力が今の余市のワインをつくっている」と確信しています。

中根さんの「秘蔵のセラー」。手作りで整備したそうです

 ここ数年のブドウのできを、中根さんは「2021年のワインは北海道のグレートビンテージですよ。22年も良かった。今年もこの調子でいけばすごくいい年になりそうです」と解説します。「21年のワインは今のうちに買って5年後、10年後まで寝かせて飲むといい」とアドバイスしてくれました。

 「余市のワインのお勧めはどれですか」と聞かれることも多いそう。そんな時は、だれが飲むのか、その人の年齢や性別、ワインに詳しいのかどうかなどを聞いて、勧めてくれます。小さなワイナリーも多く、醸造量が限られるため、品揃えはその時々で変わります。

住所/余市町大川町3-76
電話/0135・22・2315
営業時間/午前10時~午後7時半
定休日/日曜

「平川ワイナリー」の品揃え圧巻 造り手への敬意忘れぬ「馬場商店」

平川ワイナリーのワインの品揃えなら馬場商店

 もう1軒、余市のワインを買うことのできる酒屋さんに寄ってみます。馬場商店です。店主の馬場宰さんは、余市のブドウ農家やワイナリー、ヴィンヤードに強い敬意を持って、地元のワインを扱っています。

平川ワイナリーの各銘柄がずらり
余市、仁木のワインもあります

 馬場商店では、地元のワイナリーのワインの中でも特に、平川ワイナリーの品揃えは圧巻。赤、白、ロゼなど10数銘柄が通年、並んでいます。ほかにも、余市のブドウを使った道内外のワイナリーのワインがそろいます。仕入れや販売の状況によって、品揃えは変わりますが、その時のワインとの巡り会いを楽しめそうです。

 馬場さんは「ワインは農作物」と言います。天候などによって、いい時も悪い時もあります。「それでも、腹を決めて家族で余市に移住してきて、頑張っている人たちがいます。結果が出るには10年も15年もかかる。みんな苦労をしてまじめに1本のワインを造っているから、未来のための種まきを手伝っているという気持ち」と話します。

 また、馬場さんはブドウ農家にも思いを馳せます。1872年(明治5年)に開拓使がアメリカから取り寄せたリンゴの苗木を入植者たちに配布し、79年(明治12年)に日本で初めてリンゴが実ったまちが余市です。リンゴ農家たちはその150年の歴史に誇りを持って、リンゴを生産してきました。馬場さんは「今ワイン用のブドウを作っている人たちが、リンゴの木を切ってブドウに植え替えたのは、相当な覚悟と思いがあったでしょう。そういう農家の英断があったからこそ、今のワイン産地・余市があると思います」と話します。

住所/余市町黒川町16-2-3
電話/0135・22・3587
営業時間/月曜~土曜 午前10時~午後7時半、日曜 正午~午後6時
定休日/水曜
余市町を訪れる10の理由㊤ワインと多彩な食×自然がつくりだす風景

ジビエのおいしさ知って 良質な鹿肉を購入できる「Ebijin」

ジビエとエゾシカ肉のハンバーガーを提供する「Ebijin」

 前日夜におじゃましたイタリアン「ヨイッチーニ」で耳寄りな情報を入手しました。柔らかで臭みのない、おいしい鹿肉のローストを食べました。その鹿肉を扱っているのが、「Ebijin(エビジン)」だそうです。元ハンターの明念大雄さんが適切に処理した鹿肉を販売しています。

Ebijinで扱っているシカ肉

 店は「固くて臭いというジビエのイメージを変えたい」と、明念さんが今年3月にオープンさせました。明念さんは14年前に、ドッグフードを作ろうと北海道に移住。自らも鉄砲を手に猟をしていましたが、エゾシカによる農業の食害や、適切な処理ができずに駆除されたエゾシカの多くが廃棄されている現状を知り、「きちんと処理した良質な鹿肉を人に食べてもらいたい」と思うようになりました。

 若手の猟師を育て、彼らがとってきたエゾシカを独自の血抜き方法で臭みを出さずに解体、熟成させています。扱うのは2歳までのエゾシカの赤身肉のみ。さっぱりした味わいで高タンパク、低カロリーです。

 ロース(120グラム、1404円)ともも肉の「シンタマ」(同、1058円)、内もも(同、1058円)のほか、ローストした調理済みのもの(同、1296円)や冷凍のハンバーグ(150グラム、1188円)もあります。基本的にすべて、ステーキやローストで食べるのがおいしいそうで、サラダ油や米油など香りのない油をたっぷりめに使い、中火から強火で焼いて、好みの焼き加減に仕上げます。明念さんは「牛や豚は脂の味を楽しむのに対し、鹿肉は肉自体の味を楽しめる。舌の肥えた人にぜひ食べてほしい」と言います。

 店では、つなぎなし、エゾシカ肉100%のパテを使ったハンバーガー(1200円)も提供しており、4席のカウンターのほか、テイクアウトでも味わえます。猟の状況によりますが、ヒグマやアライグマが入荷していることもあるそう。この日はちょうど、3歳の雄のヒグマがありました。

住所/余市町黒川町9-60-1
営業時間/午前11時~午後6時
定休日/不定休
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小川郁子編集長
小川郁子編集長

 苫小牧生まれ、札幌育ち。ビール、ワイン、日本酒、お酒全般、控えめにいって好きです。食べ物の好き嫌いもほとんどありませんが、ウナギやハモ、アナゴなどニョロっとしたものは苦手です。1996年に北海道新聞入社後は、道内各地や東京で1次産業や政治、行政などを担当しました。2023年5月からTripEat北海道編集長。

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