昨晩、ホテル特製の創作会席と湯の川温泉のお湯を楽しんだ後、夜の函館のまちに繰り出し、夜景を見た後、函館市内限定販売の道産ワインを味わいました。道南編の2日目は函館の異国情緒を感じながら、さらに美食を探します。
目次
津軽海峡と函館湾の曲線美を感じる函館山からの夜景
函館の夜の観光の目玉といえば、「世界三大夜景」とも言われる夜景です。「函館山ロープウェイ」に乗って標高334メートルの山頂を目指します。わずか3分ほどで、山頂駅に到着です。この日は少しもやがかかった感じでしたが、眼下に広がる「100万ドルの夜景」は圧巻。左に津軽海峡、右に函館湾が広がり、曲線状に光がちりばめられています。
観光客も大勢いました。カメラやスマホを向けて写真を撮る人や記念撮影し合う人たちでにぎわっているのが見えます。下りのロープウェーを待つ人の列は、1階の乗り場から階段を伝って2階の建物外まで伸びていました。ただ、5分間隔で運行しており、20分ほど待って乗ることができました。
自然派ワインとともに本場フランスの味を提供する「オデオン」
TripEat北海道では道産ワインを飲めるお店の特集をしていますが、函館にもそんなお店がありました。五稜郭地区の路地にひっそりとたたずむ「オデオン」です。国産、海外産のナチュラルワインをそろえており、その中には道産もちらほらあります。
函館の「農楽蔵」が函館市内限定で出している「葡萄戦隊のまさーる はがいくぶらん 2022」を、「限定」につられて、オーダーします。さっぱりしていて飲みやすく、フードに合わせやすそうです。店主の向井廉さんは「自分が好きなので、置いているワインの95%はナチュラルワイン」と言います。
お通しはトウモロコシのスープ。自然の甘みとさらっとした飲み口で、はがいくぶらんと良くを合います。フードは「ワインに合うビストロ料理」とのことで、カモのローストやブッラータチーズと桃のカプレーゼなど気取らない雰囲気で楽しめます。炭火焼きも名物で、鹿肉や道産牛ヒレ肉などの炭火ローストなど、肉料理も充実しています。
ワインのお供に、「定番盛り合わせ」をお願いします。予想以上のボリュームです。手作りのパテドカンパーニュやハム、レバパテ、キャロットラペ、紫キャベツのラペ、キノコのマリネなどがたっぷり。ウフマヨのマヨネーズは酸味を抑えたこっくりした味の手作り。紫キャベツのラペはクミンの香りがきいています。白老産の豚の自家製ハムは塩気が抑えめでしっとりした食感で、オーブンで火入れしているそうです。向井さんは「保存目的ではないので、それほど塩をきつくしていません」と話します。
向井さんはフランスで1年修行し、函館・大門地区の松風町で5年ほど営業。昨年10月に現在地に移転しました。「オデオン」はフランスでの修業時代に住んでいた駅の名前とのことです。
住所/函館市梁川町18-20 |
電話/070・8988・3336 |
営業時間/火曜、水曜、木曜は午後6時~午後10時半、金曜、土曜は午前0時まで、日曜は午後9時半まで |
定休日/月曜 |
「産地表記」や本物の味にこだわり スペインの味を届ける「バスク」
2日目のランチは、古くから本格的なスペイン料理を提供している函館市内のレストラン「バスク」。オーナーシェフの深谷宏治さんは、函館西部地区の飲食店をスペインの立ち飲みバーに見立てて飲み歩くイベント「函館西部地区バル街」や「世界料理学会」の開催などを通じて、地域振興や食文化の発展に貢献しています。バスクでランチをいただきながら、深谷さんから食についてのお話を伺いました。
メーンのほか、サラダと前菜、スープ、パン、デザートが付くコースにします。ハンバーグの単品ランチや前菜なしのコース、自家製生ハムが付くコースなどもあります。前菜はピンチョス6品の盛り合わせを選びました。噴火湾産甘エビのクリームコロッケは、衣はサクサクで、ナイフを入れるとトロトロのクリームが流れてきます。南茅部産ワカメと自家製生ハムの煮物は、生ハムの塩気がシャッキリしたワカメの磯の香りを引き立てます。
この日の気温は30度近く、スープは冷たいガスパチョ。氷の入った器にスープ入りの器を浮かべた涼しげな装いで提供されました。完熟トマトを使っているそうで、トマトの甘みと酸味のあるスープがさわやかです。ニンニクの香りもあり、野菜のうまみが溶け込んでいます。
パンは小麦と塩、イーストのみを手ごねした自家製。毎日、店で焼き上げています。バターを付けて食べると、ちょうどいい塩気とバターのまろやかさが強調されます。
メーンは7種類の中から、「バスク」を冠したものをチョイスしました。「鱈のニンニクパセリソース」は、恵山でとれた1本釣りのタラを使用。たっぷりのスープをまとったアサリとタラの身が、熱せられたお皿でぐつぐつ煮立って提供されます。淡泊な味わいのタラの身に、香りの高いニンニクパセリソースがよく合います。パンですくって、ソースも残さずいただきます。「バスク地方特有の豚のゼラチン質だけを使った料理」は、豚の頭部のゼラチン質だけを集めてパテ状にし、トマトソースを合わせたバスク地方の郷土料理です。
デザートのバスクチーズケーキには、レストラン裏の菜園でとれた木イチゴが添えられています。「スペインで食す冷たいお米のデザートからつくったムース」はクリーミーなパンナコッタのような味わい。水俣産の甘夏のマーマレーッドシャーベットで、口の中をさっぱりさせます。
バスクは38年前の開店当初から、盲導犬フリーにし、車いすでも入店できるように段差のないつくりにしました。バスクは自家菜園も運営しています。秋口に生ゴミを畑に混ぜ込み、春に土をひっくり返して無農薬、無肥料の有機農法で野菜などを育て、その野菜を使った料理をレストランで提供しています。開店当初、メニューに代表的なバスク料理の一つ「小イカの墨煮」の欄に「津軽海峡産」と書いたら、「ほかの料理人に笑われた」そうです。それでも「スペインではどこから手に入れた、どんな食材か書いていたから」と食材の産地表記を続けました。深谷さんは「そういったことが今は、当たり前になっています。でも、当時は『変わったこと』だったのです」と話します。
深谷さんが大学を卒業したのは1970年。60年代には、公害病の水俣病闘争や成田空港建設に伴う三里塚闘争など戦後日本の政治的、経済的枠組みのあり方を問うできごとがありました。そんな空気の中で学生生活を送った深谷さんは料理の道に進んでからも、環境問題やバリアフリーへの配慮などについて感じ続けていたといいます。「料理の皿にも、レストランの経営にも、そういう社会の色を反映させたかった。味とは関係がないけれど、精神的な柱としてこうあるべきだというものを、実行してきました」と言います。それが、自家菜園やバリアフリー、産地の表記などにつながっています。
また、バスクでは1985年の開店当初から、生ハムを自作、パンも店で焼いています。アンチョビも30数年前から作っています。深谷さんは「バスク料理の父」と呼ばれるサンセバスチャンのルイス・イリサール氏のもとで2年半、修行しました。深谷さんは帰国する際、師匠と約束したことが2つあるそうです。東京ではなく、地方で店を開くことと、日本向けにアレンジせず、本物のバスク料理を出すことです。
開店当時、まだ国内には生ハムやアンチョビがなかなか手に入りませんでした。また、スペインでは少し塩気のあるパンに無塩バターやオリーブ油を付けて食べるそうですが、日本では有塩バターが主流で、スペインのようなパンを出すベーカリーがなかったといいます。深谷さんは「なかったから、自分で作っていただけです。今では、レストランが自家製パンを出すこともありますが、当時は変わったこととされていました」と振り返ります。
帰国した深谷さんは東京などのレストラン勤務を経て、独立した時、洋食9割、スペイン料理1割で提供を始め、受け入れられるようになるとともに、スペイン料理の割合を増やしてきたそうです。「バスク人が地元でとれたものを使って作ったのがバスク料理。魚や動物の骨やスジ、甲殻類の殻など食べられないものでだしをとり、素材を無駄なく使う。長い時間、作り続けてきたものは、やっぱりおいしい」と話します。
住所/函館市松陰町1-4 |
電話/0138・56・1570 |
営業時間/午前11時半~午後2時、午後5時~午後9時。日曜は午後5時~午後8時半 |
定休日/水曜 |
明治から昭和初期の風情が残る函館西部・元町地区
バスクを出た後は、明治から昭和初期にかけての建物や風情が残る西部地区に市電で向かいます。1859年(安政6年)に横浜、長崎とともに国内初の貿易港として開港した函館。西部地区では、外国文化が早くから入った影響で、洋館や和洋折衷の建物などが見られます。
元町公園は江戸時代には「箱館奉行所」が設置され、その後、北海道庁函館支庁が置かれるなど、函館の行政の中心地でした。1909年(明治42年)に建てられた旧北海道庁函館支庁庁舎は、道の有形文化財です。柱廊玄関があるのが特徴で、2階に張り出した屋根が柱頭飾りと中央に膨らみのある大きな4本の柱に支えられており、凝ったつくりになっています。
坂の下に白亜の壁に緑青(ろくしょう)の屋根をいただいたハリストス正教会の鐘楼が見えます。この春、2年間にわたる聖堂保全修理を終え、一般公開を再開しました。今回は、耐震工事など修復のほか、内部のイコンの洗浄・補修も実施しました。聖堂は国の重要文化財です。
1860年(安政7年)、初代ロシア領事館の付属施設として建設された聖堂は1907年(明治40年)の函館大火で焼失しましたが、1916年(大正5年)に二代目聖堂が再建されました。聖堂内部は高い丸天井の下、イコノスタス(聖障)が張り巡らされ、イコン(聖像)が設置されています。外壁はれんが造りで、セメント・モルタルで固め、さらにその上にしっくいを塗ってあります。
今も信徒の信仰の場として活用されており、日曜の聖体礼儀の時に鐘が打ち鳴らされます。リズムとともにガンガンとメロディーを奏でることから、「ガンガン寺」として市民に親しまれており、鐘の音は「日本の音百選」にも選ばれています。
元町公園周辺の代表的な存在が、旧函館区公会堂。国の重要文化財です。左右対称で2階にはバルコニーがあり、玄関、左右入り口のポーチの円柱に柱頭飾りがあるなどの特徴があります。1980年に3年かけて修復、2018年から耐震補強も含めた保存修理を実施し、現在は内部も公開されています。
発売から66年。今も1番人気の「鰊みがき弁当」
坂を下り、赤レンガ倉庫群やもう営業が終わってしまっている魚市場を抜けて、JR函館駅に向かいます。実は、自分への大事なお土産を買いに行きます。お目当ては、函館駅構内にある「駅弁の函館みかど」JR函館店です。
ショーケースの一番上の一番左、立ち食いそばなどの食券機でもポールポジションとなる場所に、ありました。「鰊みがき弁当」(千円)です。函館みかどは1936年(昭和11年)創業。鰊みがき弁当は66年の発売以来、一番人気で、売り切れてしまうことも多いそう。弁当に入っている鰊の甘露煮半身2枚入りのパック(750)円も販売しており、お土産にして、にしんそばやおつまみにも良さそうです。
住所/函館市若松町12-13 |
電話/080・3609・7954 |
営業時間/午前6時~午後6時 |
定休日/無休 |
函館出身ロックバンドが郷土の魅力発信「G4 Air Port Space Presented by GLAY」
JR函館駅からバスに乗り、約20分。帰りもぜいたくに、飛行機で函館空港から札幌・丘珠空港までひとっ飛びです。その前に、函館空港内に函館出身のロックバンド・GLAYのショップが期間限定でオープンしていると聞いて、立ち寄りました。函館空港の2階にオープン中の「G4 Air Port Space Presented by GLAY」です。
こちらのショップは、ふるさと・函館の魅力を発信したいというメンバーの思いから、今年2月25日にオープン。当初、6月に開催されたライブに合わせて、8月末までのオープン予定でしたが、来年がバンドデビューから30年の節目となることから期間を延長し、2024年末まで営業しています。
店内には、4人の顔を描いた大きなパネルや、これまで発売したシングルやアルバム、
HISASHIさんのギターなどを展示。TERUさんがこのショップの開店に合わせて描いた、函館の春の夜に舞い散る桜をイメージした「春夜(しゅんやく)」と月明かりに照らされて舞う粉雪を表現した「白夜(びゃくやく)」の絵画2点も飾ってあります。開店の時にサプライズで来店した
TERUさんのサイン入りマグカップもありました。
キーホルダーやボールペン、トートバッグなどのオリジナルグッズのほか、地元企業とのコラボレーション商品など、約30点を販売。パンとスイーツの店「King Bake」の「函館ラスク」は、道産小麦とバターで焼き上げたパンを使った一口サイズのラスク。コーンポタージュやバターしょうゆなど4種類あり、パッケージには、それぞれメンバーの顔のイラストが描かれています。
メンバーが考案したお酒やコーヒーと合わせる「ペアリングチョコレート」は、TAKUROさんがプロデュースした「白ワインペアリングチョコレート ホワイトチョコレート×ピスタチオ」、JIROさんプロデュースの、「コーヒーペアリングチョコレート キャラメルチョコレート×ローストナッツ」など、4種類あります。
ショップで扱っているのは、ほとんどが函館空港でしか買えないオリジナル商品です。函館の企業や店とのコラボ商品もあるので、GLAY関連商品というだけでなく、函館のお土産としても喜ばれそうです。
住所/函館市高松町511 函館空港2階 |
営業時間/午前8時~午後7時 |
定休日/なし |
飛行機に乗る時には薄暮でしたが、丘珠に到着すると、夜のとばりが降りていました。
家に帰ってお茶をいれ、さっそく大事に持ち帰った「鰊みがき弁当」をいただきます。ご飯の上に、鰊の甘露煮が3切れ、かずのこが4つ、三陸産茎ワカメのしょうゆ漬け、大根のみそ漬けが並んでいます。厚みのある鰊は骨まで柔らかく、はしを入れると簡単にほぐれます。天日干しされた身欠き鰊を、甘塩っぱい味付けでじっくり煮込み、一晩寝かせてあるそうです。あめ色の見た目を良い意味で裏切り、しつこくありません。かずのこはコリコリとした歯ごたえで、鰊と交互にはしを伸ばします。茎わかめの隠し味にはニンニクと唐辛子が使われており、ふんわり鼻に抜ける香りがいいアクセントになります。1泊2日の函館の「ご褒美旅」を回想しながら、ちょこちょことお弁当をつまみ、旅を終えました。
編集長のご褒美女子旅 2023 vol.4 道南編㊤海の幸とハイクラスの温泉ホテル 函館を贅沢に楽しむ
編集長のご褒美女子旅 2023 vol.3 道北編㊤羊と紡ぐ品々に触れ、最北のブルワリーを訪ねる
編集長のご褒美女子旅 2023 vol.2道央 余市・仁木編㊤道産ワイン産地で美酒を楽しむ
編集長のご褒美女子旅 2023 vol.1 札幌編①道産ワインをホテルでゆったりと
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