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2023.11.27

「道産ワインへの愛」を1冊に~札幌のワインカフェ店主・荒井さん「北海道のワインに恋をして」を出版

小川郁子編集長
小川郁子編集長

 苫小牧生まれ、札幌育ち。ビール、ワイン、日本酒、お酒全般、控えめにいって好きです。食べ物の好き嫌いもほとんどありませんが、ウナギやハモ、アナゴなどニョロっとしたものは苦手です。1996年に北海道新聞入社後は、道内各地や東京で1次産業や政治、行政などを担当しました。2023年5月からTripEat北海道編集長。

「道産ワイン愛」の詰まった自著を手にする荒井さん
「道産ワイン愛」の詰まった自著を手にする荒井さん

 「道産ワイン応援団」を自称し、札幌市中央区で道産ワインを提供する「ワインカフェ ヴェレゾン」を経営する荒井早百合さん(65)が、道産ワインの魅力や道内のワイナリーとの交流などについてつづった書籍「北海道のワインに恋をして 魅せられて、歩いて、話して6000日」を出版しました。荒井さんは2008年に首都圏から北海道に移住して以来、道産ワインに魅せられ、ブドウ畑やワイナリーに通って生産者らと交流、道産ワイン普及のためのイベントやツアーの企画や情報発信をしてきました。著作には、そんな荒井さんの「道産ワイン愛」が詰まっています。

山梨・勝沼で国産ワインに出会う

道産ワインのボトルがずらりと並ぶヴェレゾンのカウンター
ヴェレゾンカウンターには、道産ワインのボトルがずらりと並びます

 横浜出身の荒井さんとワインとの出会いは、東京の企業に勤務していた2000年ごろ。友人と遊びに行った山梨県勝沼で、春先のブドウの萌芽を見て感動し、山梨のブドウ畑に通うようになったと言います。山梨には当時、すでに70軒ほどのワイナリーがありましたが、1升びん入りの「ワインというより『ブドウ酒』」(荒井さん)という風情で、国際的にも評価は高くはありませんでした。

 ただ、そのころから、海外でワイン醸造やワインブドウの生産などを学んだ若手が増え始め、「ブドウ酒からワインに変えよう」という動きが出てきました。荒井さんはそんなワインの造り手やブドウ農家、ソムリエらに共感し、東京都内で山梨ワインの普及イベントの企画、開催などを手がけるようになりました。

夫の転勤で北海道へ 道産ワインに魅入られて

荒井さんの著作「北海道のワインに恋をして」
荒井さんの著作「北海道のワインに恋をして」

 そんなころ、札幌出身の荒井さんの夫が札幌に転勤になりました。都内で企業勤務を続けていた荒井さんはこれを機に、道内のワイナリー関係者とも交流するようになりました。休みのたびに東京から山梨や北海道に通っていたという荒井さんは2008年、務めていた会社を退職し、札幌で単身赴任していた夫のもとへ転居。ちょうど道内では、大手ワインメーカーではなく、「ブティックワイナリー」と呼ばれる小規模ワイナリーが設立され始めたころでした。

 荒井さんは北海道でもワイナリーやヴィンヤードに通いました。札幌でもレストランを借りて、道産ワインを味わうイベントを企画するなどしていました。当時、道産ワインの生産量も少なく、気軽に飲むことのできる飲食店もほとんどありませんでした。飲食店に道産ワインを扱うように働きかけたりもしましたが、なかなか広がりません。そこで、「それなら、自分で店を開こう」と2011年、ヴェレゾンをオープン。ボトル売りだと高価で手を出しにくいため、当初からグラスで提供しました。荒井さんは「道産ワインのテイスティングショップのように、手軽に味わってほしかったんです。店は、道産ワインの『布教活動』の場だから」と微笑みます。

 ヴェレゾンは、道産ワインを飲めるだけでなく、荒井さんのお話付き。ワインを選ぶ時の参考として、味や香り、特徴の説明をしますが、自らが畑に通ったり、ブドウの生産者や造り手と交流しているからこそ知っている、こだわりや生産の苦労、畑の風景などについても話します。「ストーリー付きのワイン。もちろん味もいいけれど、造り手の情熱やこだわり、ワインにかける思いなどのストーリーが、よりワインをおいしくするんです」と熱を込めます。今回の著作は、そんな「ストーリー」をまとめたものです。

余市の農家「7人侍」の英断 「書き記したい」

ヴェレゾンの店内に掲げられている道内のワイナリーの所在地を示す地図
店内には道内のワイナリーの所在地を示す地図も

 いまや道内で最も多くのワイナリーやヴィンヤードが集中する余市町周辺。もともと、町内の果樹農家は、町内のニッカウィスキー余市蒸留所が製造するジュースの原料のリンゴの生産が主流でした。しかし、リンゴの価格下落などを受け、1980年代にリンゴに代わる新たな作物の栽培の模索が始まりました。ドイツに研修に行った若手農家がワインに着目、7人の農家がワイン用ブドウの生産を始めたのが、ワインのまち・余市の始まりでした。

 この話を聞いた荒井さんは「もちろん、余市の子どもたちには、この郷土の歴史を教えているのだろう」と思ったそうです。ところが当時、小学校の郷土史の資料にも、この話は記録されていません。荒井さんは「先陣を切ってワインブドウの生産を始めた『7人侍』の開拓魂を、いつか書き記したい」と思っていたそうです。

 また、荒井さんの中には、ブドウの生産者やワイナリーの醸造家と10数年に渡って交流し、聞いたり、見たりしてきた「ストーリー」が蓄積されています。「これを形にしたい」と、荒井さんは札幌出身の編集者「まきりか」さんが主宰する出版したい人向けの講座「海辺の出版大学」に入って出版の準備を始めました。

 人との出会いを大切にし、周囲を巻き込んでイベント企画や道産ワインの普及に取り組む荒井さんの姿を見て、まきりかさんはクラウドファンディングによる「巻き込み型」の出版を提案。300万円を目標にクラウドファンディングを実施し、502人から446万2000円が集まりました。

 帯には、日本ワインの普及活動の中で知り合った「日本のワインを愛する会」の会長の俳優、辰巳琢郎さんが推薦文を寄せています。ヴェレゾンには、この会の北海道支部も置かれています。

ワイナリーやヴィンヤードの〝物語〟を収録

フランス語でブドウの実の色づきを意味する「ヴェレゾン」の店舗入り口
ヴェレゾンの入り口。「ヴェレゾン」はフランス語でブドウの実の色づきを意味します

 書籍には、荒井さんの執筆のきっかけとなったワイン用ブドウの生産の先陣を切った「7人侍」の話や、大小23のワイナリーやワイン醸造メーカー、ヴィンヤードの物語、荒井さんとソムリエらとの対談などを、荒井さんがこれまで撮りためた写真を添えて収録しています。

 AB判、オールカラーの129ページ。海辺の出版社から、2970円(税込み)で発売。初版1500部。札幌市中央区南2条東2丁目8-1大都ビル地下1階のヴェレゾンの店頭で販売しているほか、オンラインの「ワインショップヴェレゾン」で購入できます。問い合わせはヴェレゾンの電話011・231・7901へ。

編集長のご褒美女子旅 2023 vol.2道央 余市・仁木編㊤道産ワイン産地で美酒を楽しむ
小川郁子編集長
小川郁子編集長

 苫小牧生まれ、札幌育ち。ビール、ワイン、日本酒、お酒全般、控えめにいって好きです。食べ物の好き嫌いもほとんどありませんが、ウナギやハモ、アナゴなどニョロっとしたものは苦手です。1996年に北海道新聞入社後は、道内各地や東京で1次産業や政治、行政などを担当しました。2023年5月からTripEat北海道編集長。

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