帯広市以平町でワイナリーを営むあいざわ農園は、市中心部に近い住宅街に醸造用ブドウの観光農園を開設する。観光客や地元住民に農作業体験やワイン付きの食事を楽しんでもらい、十勝産ワインの魅力を発信する。開業は来年6月ごろを予定。同農園代表の相沢一郎さんは「十勝には四つのワイナリーがあるが、池田町の十勝ワイン以外は地元の人にもまだ知られていない。ワイン産地としての十勝を知ってもらう場にしたい」と意気込む。
場所は市西11北1、2の約5千平方メートルの農地で、以前は樹木の苗木を育てる畑だったという。同農園が2018年から土地を借りてブドウを植え始めたところ、生育が良かったため、今年10月に買い取った。
以平町に比べ、冬場の最低気温が5度ほど高いため、寒さが厳しい十勝では栽培が難しい欧州系品種のシャルドネやピノグリなど200本を試験的に栽培。さらに国際ブドウ・ワイン機構(OIV)登録品種で、道東で主力の山幸を中心に増やし、現在400本が成木となって根を張る。今秋には畑全体でブドウ700キロを収穫できたため、観光農園開設に踏み切った。
観光農園では収穫のほか、伸びた枝を支柱に固定するといった収穫期以外の管理など季節に応じてさまざまな体験ができるようにする。無農薬栽培のため、害虫を取り除く作業もある。地元の飲食店と連携し、昼食や夕食を提供し、ワインとともにブドウ畑の中で味わってもらう。常時開園ではなく、予約制か週末限定の運営を検討している。
帯広市中心部からタクシーで10分ほどというアクセスの良さも生かし、集客を図るほか、飲食店との関係性を深める。相沢代表は「地元のレストランで、十勝のワインを使ってもらえるようになれば」と期待する。(高橋澄恵)
(北海道新聞2023年12月12日掲載)
〈山﨑編集長のワイナリー巡り〉③相澤ワイナリー 56年ぶりに誕生した十勝に吹く新しい風