仁木町のワイナリーのワインを楽しむ「冬のワインパーティーin NIKI 仮面葡萄会」が3月10日(日)、仁木町民センターで初めて開かれ、TripEat北海道編集部のメンバーと一緒に参加してきました。会場の前ではアイマスク(仮面)が配布され、ロングドレスや衣装でドレスアップしたり、着ぐるみを着たりと仮装した参加者も多く、楽しい雰囲気の中、町内10のワイナリーやヴィンヤードのワインを楽しみました。
アイマスクで仮装 ウエルカムワインとオードブルでスタート
仁木町ワインツーリズム推進協議会が初めて企画し、約200人が参加しました。受け付け後、好みの色のアイマスクを選びます。ウエルカムワインはドメーヌイチの「蝦夷泡2022」。後志管内の料理店のかくと徳島屋(余市)、HATAKE NO NAKA(小樽)、マーレ・ブルー(余市)、ワインビストロカタバミ(小樽)の中から、事前に予約したオードブルも手渡されます。
編集部メンバーが受け取ったのは、かくと徳島屋とHATAKE NO NAKAのオードブル。かくと徳島屋の主人当宮弘晃さんは、京都の高級料亭「本家たん熊本店」で修行しており、その料理は本格的な和食ながら、渋が少なくさわやかな酸のある道産ワインに寄り添います。この日は、春菊のおひたしや焼いたニシン、鶏肉のグリル、サケの南蛮漬けなどが入っていました。ニシンはふっくら、滋味深い味わい。南蛮漬けは優しいだしが感じられ、どれも薄味なのに素材の味がしっかり感じられます。
HATAKE NO NAKAはシャルキュトリー(肉の加工品)の盛り合わせ。分厚いローストポークや生ハム、ハム、キャロットラペなどが入っています。キャロットラペはハーブの香りがほんのり。添えられた粒マスタードには、おそらく大葉が入っているように感じられ、これをちびちびなめるだけで、ワインが進みます。
仁木産のワインを次々と 新ヴィンテージも
ウエルカムワインはとっくになくなっています。会場後ろの壁際にワイナリーやヴィンヤードのブースが並んでおり、生産者の方々がサーブしてくれます。1杯300~400円程度です。
最初はドメーヌマルメガネ。ナイヤガラとツヴァイゲルトレーベ、少量の山ブドウでつくっています。2023年産のブドウを使った今年リリース予定の新ヴィンテージです。おりがらみで、優しいだし感があります。エチケットのモデルはもちろん、つくり手の大野崇さんです。
次はドメーヌ・ブレスへ。エチケットに梅結びを使った混醸の白ワイン「MUSUBI」などをリリースしてきた「ル・レーヴ・ワイナリー」が昨年12月、社名を変更し、ドメーヌ・ブレスになりました。2015年からブドウの栽培を始めた本間裕康さん、真紀さん夫妻は当初から、ワインづくりと併せて、カフェや宿泊施設も運営したいと構想しており、フランス語で「夢」の意の「ル・レーヴ」と名付けました。18、19両年の10R(とあーる)ワイナリー(岩見沢)での委託醸造を経て、2020年から自社醸造を始めました。その間、ゲストルームを併設したカフェもオープン。そして昨年、新棟が完成し、今年はコンドミニアムを稼働させます。
「MUSUBI」はピノ・グリやシャルドネなどの混醸の白ワインで、「ブドウとブドウが結ばれてできているという意味と、お祝いの場で一緒に飲む人と人とが結ばれるようにという願いを込めています」と真紀さんは説明します。着実に歩みを進めた本間さん夫妻の「夢」が実現したことで、社名を「祝福」の意の「ブレス」に変えたのです。
そんな2人の物語を聞きながら、赤の「ENISHI~縁 2022」と白の「シャルドネ 2021」をいただきます。ENISHIはムニエとピノ・ノワールの混醸で、淡いルビー色。上品なタンニンとうまみがあります。シャルドネはかんきつ系の香りがあり、酸味は穏やかでエレガントな印象。どちらも体にすうーっと吸い込まれていくような感覚です。
仁木産業振興社の白「旅路 2023」を1杯。同社は仁木町の地域おこし協力隊員と狭量隊員OBが設立し、2022年に初めて「ニキ・イースト」を委託醸造。新ヴィンテージの23年はまだエチケットができておらず、瓶詰めしたばかりです。発泡は弱めですが、薄にごりで、香りが高くすっきりした味わいです。昨年はナイヤガラが豊作だった一方、旅路はできが良くなく、余市から仕入れた「買いブドウ」でつくったそうです。
ドメーヌアルビオーズでは、白「BONBORI 遅摘み 2022」を。2019年から苗を植え始め、「2022」は委託醸造したアルビオーズの初ヴィンテージです。その年の秋にはワイナリーが完成し、今は自社醸造しています。冬にこたつで食べるミカンのような、ほんのりした甘みがあります。
naritayaでは白の「Asahidai 245 BLANC 2023」をいただきます。成田和仁さん、真奈美さん夫妻は2020年に仁木に移住し、和仁さんが手打ちするそば店を営みながらブドウを育て、そば店に併設する2部屋のみの宿泊施設「naritaya Lodge」も運営しています。ワインは21年に試験的に醸造、22年が「エピソード1」。「エピソード2」となる23年は、さわやかな酸と香りはそのままに、ややしっかりした果実味があります。ブドウを盗み食いするかわいらしい動物たちが画かれたエチケットも健在です。
次は、TOMAPU FARM(トマップファーム)です。100年続いた農園を、代表の高橋ひかりさんが2020年に継ぎ、新規就農。「トマップ」とは、農園のある仁木町然別地区の古い地名だそうです。23年に初めて本格的に、NIKI Hillsに委託醸造しました。赤、白、ロゼ、ロゼスパークリングの4種類を計3000本。リリースは今年夏の予定で、貴重な初ヴィンテージです。
この日は、ロゼのスティルとスパークリングを出品。ツヴァイゲルトレーベ100%で、淡いロゼ色がきれい。スパークリング、スティルともにまろみのある、柔らかな香りが立ち上ります。酸味の少ない、優しいまろやかな味わいです。
NIKI Hills wineryのブースには、フラッグシップの「HATSUYUKI」などたくさんのワインが並んでいます。「赤と白と、どちらがお好みですか」と聞いてくれましたが、めざとく見つけたオレンジの2022年に決定。NIKI Hillsのオレンジは初めてです。ピノ・グリ100%で、22年に400本、23年に900本しかつくっていません。タンクでの醸しの時間を長くして、ブドウの味わいをじっくり抽出しているそうです。色は薄いロゼで、香りが華やか。ほんの少しの苦みがありますが、酸がさわやかですっきりした味わいで、おいしいです。次はメルローの2022年を。これも最近つくり始めたそうで、メルローらしい、まろやかで口当たりの良いワインです。
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最後に、ドメーヌ・イチのブースへ。人気があって、最初からずっと長い列ができていて、並ぶのにちゅうちょしていたのですが、仁木のワイン会に来て、ドメーヌ・イチを飲まないのはあり得ません。迷いましたが、「ブラン・ド・ノワール 2020」をお願いします。ピノ・ノワールの貴腐をステンレスタンクで発酵させた後、古樽で1年熟成させ、さらに1年間びん内熟成しています。果物のような香りがあり、貴腐らしい甘みもありますが、きりっとして軽快です。
列に並んでいた人から教えてもらったのですが、実は「ピノ・ノワール2018」や「ピノ・ノワール2020」、「イチ・ブラン2019」など、希少なヴィンテージのワインを数量限定で提供していました。事前に別料金でコインを入手する必要があったそうで、残念ながらあきらめました。
ステージパフォーマンスやオークションも
おいしいワインを求めて会場内を歩いている間にも、ステージではさまざまなパフォーマンスが行われています。仁木町のイメージキャラクター「ニキボー」も特別サイズの仮面を着けて来場。バイオリンとピアノのデュオ、アコーディオンなどの演奏も披露されました。収益を能登半島地震の義援金として寄付する、出店ワイナリー・ヴィンヤードのワインのオークションも実施され、ドメーヌ・ブレスのファーストヴィンテージに2万1000円の値が付くなどして盛り上がりました。
このほか、会場にはフードやパン、ジェラートなどを販売する仁木や余市のショップも出店。早々に売り切れる店もあり、盛況でした。
実は、出店したすべてのワイナリー・ヴィンヤードのワインを制覇したと思っていたのですが、終了後、主催者に確認したところ、以前にTripEat北海道で開催をお知らせする記事を掲載した時から、さらに参加ワイナリー・ヴィンヤードが増えていたそう。生産者が参加せず、ワインのみ出品、フードブースで販売していたワイナリー・ヴィンヤードが2つあり、見逃してしまったのです。そんなわけで、niki vineyard(ニキヴィニヤード)の「Snoglys(スノグリス)」と、OneTune Wines(ワンチューンワインズ)は飲み逃しました。制覇できず残念でしたが、次の機会の楽しみにとっておきます。
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