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2024.04.04

「地元 仁木で手に入るワインをつくりたい」 北海道仁木町の地域おこし協力隊員らが挑戦中~今夏に2度目のリリース予定

小川郁子編集長
小川郁子編集長

 苫小牧生まれ、札幌育ち。ビール、ワイン、日本酒、お酒全般、控えめにいって好きです。食べ物の好き嫌いもほとんどありませんが、ウナギやハモ、アナゴなどニョロっとしたものは苦手です。1996年に北海道新聞入社後は、道内各地や東京で1次産業や政治、行政などを担当しました。2023年5月からTripEat北海道編集長。

ベリーベリーファーム&ワイナリー仁木の醸造タンクの前に並ぶ(左から)福光さん、山口さん、三浦さん
ベリーベリーファーム&ワイナリー仁木の醸造タンクの前に並ぶ(左から)福光さん、山口さん、三浦さん

 北海道内の果樹生産地として知られ、ワイナリーが近年増加している、仁木町の地域おこし協力隊員と隊員OBの計3人が、合同会社「仁木産業振興社」を設立し、町内や余市町のブドウを買い付け、仁木町内のワイナリーに委託醸造してワインを製造しています。2023年秋には初めて醸造した前年より500本分ほど多い1600~1700本を仕込み、7月に2度目のリリースを予定。3人のうち1人は今春、協力隊員の任期を終えて仁木を離れますが、残りの2人は町内で就農、今後も地域のワインづくりに関わりたいと意欲を示しています。

きっかけは「豊作で余ったブドウを買わないか」

福光さん(左)の畑に農作業の手伝いに来た三浦さん(中央)と山口さん
福光さん(左)の畑に農作業の手伝いに来た三浦さん(中央)と山口さん

 3人は、隊員OBの福光賢治さん(58)、現役隊員の山口光市さん(60)と三浦夕佳さん(30)。福光さんはワインづくりを目指して、19年に隊員に就任。「ドメーヌ・イチ」の銘柄で知られる町内のワイナリー「ベリーベリーファーム&ワイナリー仁木」でワインづくりを学び、21年に就農し、ブドウを栽培しています。果樹栽培の就農を目指していた山口さんは、隊員として町西部の銀山地区の振興を支援しながら、昨年、町内で離農する農家から果樹園を取得。任期の7月まで隊員として活動を続け、果樹園で営農もしています。三浦さんは隊員として、ワインツーリズムの振興を手がけています。

福光さんの畑のブドウ
福光さんの畑のブドウ
2022年に初めてつくったロゼ(左)と白
2022年に初めてつくったロゼ(左)と白

 ワインづくりのきっかけは、福光さんが22年の8月、町内の農家から「豊作でブドウが余っているから、買わないか」と持ちかけられたことでした。果樹の栽培が盛んな仁木では近年、ワイナリーが増加しており、ワインの評価も高まっていますが、個人経営で小規模なワイナリーも多く、生産本数は限られています。「ブドウの産地で、仁木産ワインも全国的に脚光を浴びているのに、地元でなかなか買えない」と感じていた福光さんは、醸造に乗り出すことを決意。隊員の山口さんと三浦さんに声をかけ、「バッファロー」と「ポートランド」の2品種を買い入れることにしました。

「人為的な環境をつくらず、自然任せ」で仕込み

 農家から連絡を受けてわずか2週間後、3人はブドウを収穫、ベリーベリーファーム&ワイナリー仁木の施設で、ワイナリーのスタッフとともにワインの仕込みを始めました。福光さんは「特段、手をかけているわけではなく、果汁をしぼってそのまま置いているだけ。人為的な環境をつくらず、自然任せです」と話します。

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 この年は、バッファローでロゼスパークリングを600本余り、ポートランドで白のスパークリングを500本製造。23年1月には合同会社を設立し、酒類販売業免許を取得して、夏から仁木や余市の酒店で販売しています。

2023年のブドウでつくった旅路を手にする山口さん(左)とナイアガラを持つ福光さん
2023年のブドウでつくった旅路を手にする山口さん(左)とナイアガラを持つ福光さん

 23年は、余市の農家から「ナイアガラ」と「旅路」の2品種を購入し、仕込みました。現在、びん内発酵させており、1600~1700本を7月ごろ、リリース予定です。ナイアガラはすっきりした仕上がりに。旅路は夏の暑さでブドウの傷みがひどく、選果を厳密にしたところ、雑味がなくなりすぎたので、別のワイナリーに委託醸造している福光さんの畑のピノ・ノワールの皮と種を袋に入れて漬け込んでみたそうです。福光さんは「少し色が付くかと思ったけれど、色は移らず、ピノ・ノワールの香りやタンニン、渋みが少し出ました」と話します。

ワインを通じて地域貢献、地域活性化を

発酵が進んだ旅路(左)と発酵途中の旅路。発酵が進むと色が薄くなります
すっきりと仕上がったナイアガラ

 仁木産業振興社は当面、これまでの2年間と同様、仁木や余市のブドウを買って、ベリーベリーファーム&ワイナリー仁木の施設で仁木産ワインの醸造を続け、生産量も3000本ほどに増やしたい考えです。ブドウとワインのまちの仁木で、「仁木ワイン」を手軽に手に取ってもらいたいという、地域貢献の思いがあるからです。

 地元で仁木産のワインを手にしてほしいという当初の願いから、販売は仁木町内の酒店2軒と余市町内の2軒、ニセコ町内の1軒など、10軒程度。それでも、道外の百貨店や酒店などから新しいワインを求めて「仕入れたい」と申し出が相次いでおり、福光さんは「ワインの話題性の高さに驚いた」と言います。

 また、ワインという「ツール」を持ったことで、仁木や余市で開かれるワイン関連のイベントに参加するなど、地域や地元ワイナリーとのつながりができ、そのイベントなどに参加した人たちからの支援や評価が励みになるそうです。ワインが、地域貢献や地域の経済活性化に関わりたいという3人の願いをかなえてくれています。

福光さんの畑で農作業を手伝う山口さん

 一方、福光さんは約2ヘクタールにピノ・ノワールやシャルドネなど10種類ほどのブドウを約4000本、植えています。昨秋初めて、ピノノワールを200キロほど収穫し、町内のワイナリー「NIKI HILLS Winary」に委託し、ワインを醸造しました。将来的には自分のワイナリーをつくりたいという夢があります。

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 山口さんが昨年取得した果樹園には、サクランボやモモ、ナシ、リンゴ、ウメ、ラズベリーなどさまざまな果樹が植えられています。山口さんは「駆け出しの農家。でも、作った果物をこのワインに入れたサングリアを出したい」と話します。三浦さんは5月で協力隊の任期を終え、町を離れる予定ですが、ワインづくりは貴重な体験になったようです。

小川郁子編集長
小川郁子編集長

 苫小牧生まれ、札幌育ち。ビール、ワイン、日本酒、お酒全般、控えめにいって好きです。食べ物の好き嫌いもほとんどありませんが、ウナギやハモ、アナゴなどニョロっとしたものは苦手です。1996年に北海道新聞入社後は、道内各地や東京で1次産業や政治、行政などを担当しました。2023年5月からTripEat北海道編集長。

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