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2022.06.01

〈山﨑編集長のワイナリー巡り〉②山﨑ワイナリー(三笠市)農村の四季をワインボトルに詰める

山﨑真理子
山﨑真理子

 北大水産学部時代に1年間、練習船に乗って遠洋航海に出ていた船乗り。北海道新聞社に入社後は、社会部の警察担当を振り出しに、網走、帯広、釧路など道内各地で勤務。東京勤務時代は政権交代時の民主党の番記者として、鳩山政権誕生を取材した。2022年4月にTripEat北海道を立ち上げ、初代編集長に就任、23年5月から千歳支局長。

美しい丘陵地に広がる山﨑ワイナリーのビンヤード
美しい丘陵地に広がる山﨑ワイナリーのビンヤード

家族経営ワイナリーの先駆け

 丘陵地帯が広がる三笠市達布(たっぷ)。古くからの農村地区で3代続いた畑作・稲作農家の山﨑和幸さん(69)が2002年、個人農家として全国で初めて酒造免許を取得し、「山﨑ワイナリー」を創業した。50を超えるほどに増えた道内ワイナリーの原動力にもなっている家族経営ワイナリーの先駆けとして、100%自社畑でブドウを育てている。

土日祝日のみ営業するワイナリー併設の「SHOP」
ワイナリー併設の「SHOP」は、土日祝日のみの営業

自立した農業を目指して

 1989年、ニュージーランドへ農業研修に行ったのが始まり。新しい農業の姿を模索していた山﨑さんは、栽培から、加工、販売まで手がけるワイナリーに「自立した農業」の可能性を見いだした。

 最初の年に仕込んだ、当時、寒冷な北海道では不向きとされていた高級赤ワイン用品種のピノ・ノワールのワインが評判となった。一躍全国に名が知れ渡ると同時に、道産ピノ・ノワールの将来性に懸けた志の高い造り手を道内に呼び込んだ。
 現在、三笠ジオパークに認定されているブドウ畑12ヘクタールでピノ・ノワール、バッカス、リースリングなど欧州系9種類のブドウを育てる。これらから造るワインは、いずれも高い評価を得ている。

ビンヤードの前に立つ山﨑太地さん
ビンヤードを前に「ワインは唯一、加水しなくていいお酒。この土地で栽培し、この土地で出来る限り売っていきたい」と話す山﨑太地さん

農村を次世代に引き継ぐために

 ワイン造りについて、次男で栽培担当の太地さん(36)は、防風林を例に答えてくれた。
 防風林を植えた人は、その恩恵に預かれない。次の世代が良い状態になれば、と植えたもの。次はもっとよくなる-。そうやって今に送ってもらった農村を次の代に渡すために、ワインを造っている、と。
 だからこそワインは「達布の四季が思い浮かぶように造っている」と説明する。

ワインボトルに達布の四季を詰める

 ワインが注がれたグラスの香りをかぎ、少しだけ口に含む-、そんな一連の動作の中で四季を感じてもらう。最初に感じるほんのりとした土っぽさ、緑の匂い、夏のような熟した果実の香り、冬のきりっとした味わい。
 生産量の8割を自社販売するのも、ワインを買うために、この土地に来て、景色を見てもらうことに価値があるからだ。何なら泊まって行ってもらいたい。「そして本当に気に入ってくれたら、三笠に住んじゃう人が出てくるかもしれないでしょ?」と笑う。

「SHOP」限定ワインなど陳列棚に並ぶワイン。
「SHOP」に並ぶワイン。SHOP限定ワインも販売している

 良いワインを造るためには、良い地域になっていることが最も近道だという。ワイナリー併設の週末だけオープンする「SHOP」には、ワインが常時並び、地元の人たちがひっきりなしに訪れる。「ワインを買って、知り合いにあげてくれている。三笠の人たちが営業してくれているんです。だから粛々と、良いワイン造りだけをしていればいい環境になってきている」と感謝する。

コロナ禍で今は休止中だがワインの試飲もできるSHOPの店内
「SHOP」の店内。コロナ禍のため試飲は休止中
〈山﨑編集長のワイナリー巡り〉①最北のワイナリー森臥(名寄市)かがり火を焚きながらブドウを守る

達布山から未来を語る

 ワイナリーのすぐ近くには、地区のシンボル・達布山(143メートル)がある。頂上の展望台から石狩平野を一望できることから、北海道開拓期には測量の基準点とされた。明治中ごろまで、山県有朋や板垣退助、井上馨など政府の要人が道内視察の際に登り、北海道開拓の展望を語った場所だ。

周りに高い山が少ないため日当たりが良く恵まれた環境のブドウ畑
周りに高い山が少ないため日当たりが良いなど、恵まれた環境のブドウ畑

 目指すは、ワインに付随した域内産業を構築し、自活できる地域にすること。自分の残りの人生でできるか分からないけれど「達布から空知の未来をワイングラスを通してみてみたい」と思っている。

◇    ◇    ◇

 北海道にあるワイナリーは53を数え、今やワインの一大産地となっています。地形や気候、積雪量の違いなど、生産者たちは地域ごとのテロワール(風土)を生かし、時には自然と戦いながらブドウの樹を育て、ワイン造りをしています。

 人とブドウの生命力が勝ち取った「命の恵み」でもあるワイン-。

 そんなワインを生み出す北海道のワイナリーを編集長の山﨑が巡ります。

<山﨑ワイナリー>
三笠市達布791の22

ワイナリーに併設する「SHOP」は、土日祝日のみの営業で、支払いは現金のみ。

HPは、http://www.yamazaki-winery.co.jp/index.html

山﨑真理子
山﨑真理子

 北大水産学部時代に1年間、練習船に乗って遠洋航海に出ていた船乗り。北海道新聞社に入社後は、社会部の警察担当を振り出しに、網走、帯広、釧路など道内各地で勤務。東京勤務時代は政権交代時の民主党の番記者として、鳩山政権誕生を取材した。2022年4月にTripEat北海道を立ち上げ、初代編集長に就任、23年5月から千歳支局長。

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