道内で最も新しいワイナリー誕生
道南の日本海側に面する上ノ国町にある上ノ国ワイナリーは、北海道で最も新しい53番目のワイナリーとして昨年、醸造免許を取得した。
昨秋、隣町の厚沢部町産の黒ブドウ「セイベル」を買い付け、初醸造。今年7月、初リリースワインとなる「上(かみ)の泡 セイベル ロゼスパークリング2021」を売り出した。
雇用創出と定住化対策
ワイナリーは、上ノ国町が地方創生の一環として雇用創出、定住化対策を目的に、2015年に閉校した旧湯ノ岱小校舎を総事業費4億5千万円かけてリノベーションした。施設は町内の地域商社「上ノ国開発」が町から受託運営。今年1月、施設をオープンした。
ワインの直売所のほか、サテライトオフィスと宿泊施設を併設する。北海道新幹線が停車するJR木古内駅から車で20分ほどに位置し、近くには湯ノ岱温泉や町営スキー場もあることから首都圏からのワーケーション利用も狙う。
同社担当者は「ワインで上ノ国の知名度を上げていくと同時に、ワイナリーにはワイン以外にも地元の物を置いて、多くの人に立ち寄ってもらえる拠点にしたい」と話す。
2025年初収穫を目指して
町内2カ所にある計8ヘクタールの畑には昨年から、シャルドネ、ピノ・ノワール、ピノグリの栽培を始めた。早ければ2025年の初収穫、そして、年間7万本の出荷を目指すという。
ワイナリーへの新規参入の動きが活発化し、新たなワイン産地として注目を集める道南。山梨県と北海道・上川エリアでの経験がある栽培・醸造担当の東出和喜さん(40)は「風が止むことがない地域なので、春先に大敵の霜が降りることもない。雪も少ないので、ブドウの樹が雪の重みで折れないように収穫後に樹を寝かせて、春になるとまた起こす必要がなく、道外と同じ作業量で済む。とても管理しやすい」と栽培地としての優位性を説明する。
循環型の減農薬栽培と若手育成を目指す
ブドウの搾りかすを堆肥にして畑に戻す循環型の減農薬栽培と、亜硫酸を極力抑えたワイン造りが目標だ。東出さんは「1粒1粒に向き合いながら育てたブドウで、飲みやすいワインを造り、ワイン人口を増やしたい」と将来を思い描く。
若手醸造家の育成も上ノ国ワイナリーのテーマの一つといい、「ワイナリーをやりたい人が集まって、お互いに学び合える場にできれば」との期待も寄せる。
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<上ノ国ワイナリー> 上ノ国町湯ノ岱243の4。サテライトオフィスを併設し、ワーキングスペースや宿泊可能な個室、オープンキッチンなどを設置。初ワインの販売開始に合わせてショップも開設する。
北海道にあるワイナリーは53を数え、今やワインの一大産地となっています。地形や気候、積雪量の違いなど、生産者たちは地域ごとのテロワール(風土)を生かし、時には自然と戦いながらブドウの樹を育て、ワイン造りをしています。
人とブドウの生命力が勝ち取った「命の恵み」でもあるワイン-。そんなワインを生み出す北海道のワイナリーを編集長の山﨑が巡ります。
(※記事中の情報は記事公開当時のものです)
〈編集長の北海道ワイナリー巡り〉①最北のワイナリー森臥(名寄市)かがり火を焚きながらブドウを守る
〈編集長の北海道ワイナリー巡り〉⑫はこだてわいん(七飯町) 道南ワインの先駆けとして半世紀